スペースセービングの鍵は電子化!オフィス空間最適化へのアプローチ
フレキシブルな働き方が求められる現代において、オフィススペースの節約や有効活用は重要な課題の一つになっています。この課題の解決策として今注目されているのが、「書類の電子化」による「スペースセービング」です。今回は、物理的なスペースを節約しながらも、効率的な業務運営を実現するための「スペースセービング」と「書類の電子化」について、詳しく解説します。
目次[非表示]
- 1.なぜスペースセービングが求められるのか
- 1.1.①都市部のオフィススペースの高額化
- 1.2.②テレワークの普及
- 1.3.③スタートアップや中小企業のスペース制限
- 2.実際にはどれくらいのスペースを削減できるか
- 2.1.①社内全域の書類の電子化と書類削減
- 2.2.②事務所移転に伴う技術文書の電子化
- 2.3.③人事書類の電子化
- 2.4.④特許出願に関する書類の電子化(1)
- 2.5.⑤特許出願に関する書類の電子化(2)
- 3.書類の電子化がもたらす効果
- 3.1.①スペースの最適化とオフィスの再設計
- 3.2.②コスト削減
- 3.3.③効率的な文書管理とアクセス性の向上
- 3.4.④セキュリティとコンプライアンスの強化
- 3.5.⑤環境への影響の軽減
- 3.6.⑥災害対策とリスク管理
- 4.電子化における考慮すべき追加要素
- 4.1.デジタルストレージのスペース
- 4.2.データの消失リスクと対策
- 5.まとめ
なぜスペースセービングが求められるのか
働き方が変わるにつれて、オフィスの役割や空間利用にも変化が求められています。近年ますます需要が高まっている「スペースセービング」も、その変化のうちの一つです。では、スペースセービングが求められる背景にはどのようなものがあるのでしょうか。具体的には、以下のような例が挙げられます。
①都市部のオフィススペースの高額化
一つ目の要因は、都市部のオフィススペースの高額化です。近年の不動産価格の上昇に伴い、都市部のオフィススペースは賃料が年々高騰しています。この影響により、限られたスペースを最大限に活用することを目的として、スペースセービングが求められるようになりました。これまで紙の書類の保管に使用していたスペースを削減し、より効率的なオフィスレイアウトを設計したいと考える企業が増加しています。
②テレワークの普及
二つ目は、テレワークやハイブリッドワークの普及による影響です。働き方改革やテレワークなどが普及・推進しはじめた影響により、全社員が同じ時間に、同じオフィスに出社するという状況は減少しつつあります。全社員分のデスクスペースを確保する必要性が低下することで、フレキシブルなワークスペースを作成しようとする企業や、オフィスを縮小し予算を抑えようとする企業も目立つようになりました。その結果、レイアウト変更時に書類用のキャビネットが邪魔になったり、新たなオフィスに十分な書類の保管スペースがなかったりするなどといった問題が発生し、スペースセービングが必要とされるようになっています。
③スタートアップや中小企業のスペース制限
三つ目は、特にスタートアップ企業や中小企業で行われるスペース制限です。成立から間もないスタートアップ企業や、小規模に事業を行っている中小企業では、不要なコストをできるだけ削減し、限られた資金を最大限に活用することが求められます。そこで、コスト削減の一環として求められるのがスペースセービングです。紙の書類などの物理的な資産をできるだけ削減し、効率的なスペース利用を実現しようする動きが高まっています。
これらを踏まえて考えると、スペースセービングは現在のビジネス環境において必要不可欠な課題であるといえるでしょう。
実際にはどれくらいのスペースを削減できるか
スペースセービングを行う方法としておすすめなのが、紙の書類を電子化し、削減していくことです。紙の書類を電子化した後、保存の必要がある書類は別拠点の倉庫に移管、保存の必要がない書類は廃棄することで、それまで書類の保管に利用していたスペースを大幅に節約することが可能となります。例えば、約20,000枚の書類を保管するためには、4段のファイリングキャビネット1台分のスペースを必要としますが、これらの書類をすべて電子化することで、保管スペースはほぼゼロにまで削減できます。
さて、ここからは当社で実際に電子化を行った事例をもとに、他の企業が電子化によってどれくらいの書類とスペースを削減したのか見てみましょう。
①社内全域の書類の電子化と書類削減
< 仕様>
業種 |
食品メーカーB社様 |
対象文書 |
各部門で保管している書類(契約書、従業員情報、製品に関する情報など) |
概算数量 |
約30万枚(電子化数) |
<導入前の課題>
- 書類が莫大にあり、執務スペースを圧迫していた
- 紙の書類を探すのに時間がかかる
- 紙の情報が多く、テレワークの導入が困難
<導入効果>
- 書類の減少によりスペースを削減できた
- 情報が探しやすくなった
- 情報が共有化され、テレワークの導入が促進された
電子化により、約10万枚の書類削減に成功されたお客様の事例です。電子化だけでなく、書類の廃棄も併せて行ったことで、スペースの削減を実現されました。また、情報の共有化や検索性の向上等、スペース削減以外の効果も実感されています。
当事例の詳細はこちらをご覧ください。
►食品メーカー様事例 | 社内全域の書類の電子化と書類削減
②事務所移転に伴う技術文書の電子化
< 仕様>
業種 |
電設業A社様 |
対象文書 |
設備の完成図書、保守工事報告書 他 |
概算数量 |
約15万ページ(50箱) |
<導入前の課題>
- 移転先に、書類を保管するためのスペースが不足している
- 移転までの期限が短い
<導入効果>
保管スペースが削減された
書類が探しやすくなった
電子化により、保管スペースの大幅削減に成功されたお客様の事例です。日常業務において電子化したPDFデータを活用することで、書類の廃棄や、外部倉庫への移管を可能にしました。また、PC上で書類が検索できるようになったことで、書類を探す手間が省かれ、問い合わせ対応も容易になりました。
当事例の詳細はこちらをご覧ください。
►電設業事例 | 事務所移転に伴う技術文書の電子化
③人事書類の電子化
<仕様>
業種 |
大手食品メーカーA社様 |
対象文書 |
雇用契約書、誓約書、履歴書、雇用時健康診断書 他 |
概算数量 |
約30,000枚 |
<導入前の課題>
人事書類が増えて、執務室内のスペースで保管しきれなくなった
入退社に伴う書類の整理を効率化したい
<導入効果>
人事書類の保管スペースを導入前の5%に削減できた
テレワークでも書類の確認ができ、入退社管理の書類の整理がしやすくなった
電子化により、対象書類の保管スペースを導入前の5%にまで削減されたお客様の事例です。執務室で保管する書類の量を95%削減できたため、原本入れ替え作業(ファイリング作業)の負担も大幅に軽減されました。さらに、電子データ化によりテレワーク中でも書類を確認できるようになりました。また、倉庫の入出庫にかかる費用等の保管コストも削減されました。
当事例の詳細はこちらをご覧ください。
►大手食品メーカー様事例 | 人事書類の電子化
④特許出願に関する書類の電子化(1)
<仕様>
業種 |
士業・法律事務所A社様 |
対象文書 |
各国の特許庁に対する特許出願に関する書類(主にA4・A3サイズ) |
概算数量 |
約800,000ページ |
<導入前の課題>
書類が執務室に入りきらない
紙を探すのに手間がかかる
<導入効果>
書類の整理・保存に必要なスペースを節約できた
一元管理が実現し、情報を探す時間が大幅に短縮された
電子化により、書類の保管スペースの削減・節約を行ったお客様の事例です。また、電子化によって書類が一元管理できるようになり、書類の検索性も向上しました。書類を探す手間を解消し、業務の効率化も実現されました。
当事例の詳細はこちらをご覧ください。
►士業・法律事務所様事例 | 特許出願に関する書類の電子化
⑤特許出願に関する書類の電子化(2)
<仕様》
業種 |
大手自動車メーカーA社様 |
対象文書 |
特許出願資料(メモ書きからA2サイズの図面まで様々なサイズの書類が混在) |
概算数量 |
約180万枚、約550箱 |
<導入前の課題>
過去の特許出願資料を取り寄せる、手間と時間を削減したい
文書の保管コストを削減したい
<導入効果>
特許に関する業務処理のスピード化を実現
特許出願資料に占有されていたスペースが有効に活用できる
電子化により、書類の保管スペースと保管コストを同時に削減されたお客様の事例です。電子化後の書類は廃棄することで、保管スペースとコストを削減し、今まで特許出願資料で占有されていたスペースを有効に活用できるようになりました。また、業務負担を軽減し、人件費の削減や業務処理のスピード化も実現されました。
当事例の詳細はこちらをご覧ください。
►自動車メーカー様事例 | 特許出願資料の電子化
他にも、さまざまなお客様が電子化によるスペース削減に取り組まれています。
書類の電子化がもたらす効果
紙の書類を電子化することで、保管スペースを削減することができます。しかし、書類の電子化がもたらす効果は、スペースセービングのみにとどまりません。書類を電子化することは、さらなるオフィススペースの有効活用、コスト削減、情報へのアクセス性向上、セキュリティの強化、環境への配慮など、多方面にわたるメリットを期待できるのです。
①スペースの最適化とオフィスの再設計
電子化された書類は、電子データとしてサーバーやクラウド上で保管できるため、物理的な保管スペースを必要としません。そのため、書類管理に利用していたスペースの最適化が可能となり、オフィススペース全体の再設計や、効率的な活用ができるようになります。例えば、書類用のキャビネットを撤去し、空いたスペースに会議室や作業スペースを増設すれば、業務効率の向上が期待できます。また、リフレッシュスペースや休憩スペースを設けることで、社内コミュニケーションの活性化を図ることも可能です。
このように、オフィススペースを最適化することで、様々な業務改善を行うことができます。
②コスト削減
書類を電子化して紙を削減することで、プリンターインク、ファイリングキャビネットなど、紙の書類を管理するのにかかっていたコストを削減することができます。電子化の結果、原本の保管が不要である書類については、適切に廃棄処分することで、オフィス内や倉庫などでの保管にかかる保管コストも削減することが可能です。これにより、運営コストの長期的な削減を見込むことができ、より効果的に資金を活用することができるようになります。
③効率的な文書管理とアクセス性の向上
電子化された書類は、紙の書類に比べて検索性が高く、情報を探しやすいというメリットがあります。また、情報の一元管理ができ、情報にアクセスする時間や場所を問わないことから、いつでも、どこからでも、容易かつ迅速に必要な情報へアクセスすることが可能です。情報の検索性とアクセス性の向上は、業務効率の向上と時間の節約につながるほか、テレワークの推進やフレキシブルな勤務体系のサポートなど、柔軟な働き方づくりにも寄与します。
④セキュリティとコンプライアンスの強化
電子化した書類には、パスワードの付与、アクセス制限の設定、暗号化などの適切なセキュリティ対策を施すことで、紙の状態で保管しておくよりも安全に保管することができます。また、紙の書類と比較して、バックアップの作成も容易です。これらにより、機密情報の保護が強化され、データ漏洩などのセキュリティリスクが減少します。また、コンプライアンスの順守などにも効果を発揮します。
⑤環境への影響の軽減
紙の書類を電子化することで、情報をデータで共有することが可能となり、紙の使用量の削減が期待できます。例えば、会議や打ち合わせにおける資料が電子化されれば、紙を使用した資料配付を行う必要がなくなります。印刷やコピー等にかかっていた手間やコストを削減することも可能です。また、紙の使用量を削減することは環境負荷の抑制にもつながり、ひいては持続可能な企業づくりの推進にも寄与します。
⑥災害対策とリスク管理
書類の電子化は、BCPの観点からも大きな効果を発揮します。紙の書類は、地震や火災、水害といった災害時に破損するリスク、管理不足による紛失リスク、そして無断での情報アクセスリスクなど、多くの脅威にさらされています。これらのリスクを電子化によって軽減できます。電子化された書類は物理的な損傷を受けにくく、災害が発生しても重要な文書を守ることができます。さらに、紙の原本を直接取り扱うことなく、電子データを通じて内容を確認できるため、紛失のリスクを大幅に減少させます。加えて、適切なアクセス制限とバックアップ体制を整えることで、情報漏洩のリスクも低減可能です。こうした安全性の向上は、結果的にビジネスの連続性を支え、保証することにつながります。
以上のように、書類を電子化することは、スペースセービングを行うだけでなく、組織全体の運営効率と持続可能性にも大きく貢献します。
電子化でビジネスはどう変わる?以下の記事では、電子化によるスペース最適化や情報へのアクセス性向上などが行われた例を紹介し、業務改善への貢献を解説しています。電子化のメリットについて深く理解されたい方は、こちらも併せてご覧ください。
►未来を手に入れる!書類の電子化とその圧倒的メリット
電子化における考慮すべき追加要素
紙文書の電子化は、オフィスのスペース削減や、業務効率化のための重要な一歩となります。しかし、多くのメリットをもたらす一方で、考慮すべき注意点も存在します。
代表的な注意点としては、以下の2点が挙げられます。
デジタルストレージのスペース
電子化された文書は、物理的な保管スペースを必要としない代わりに、デジタルストレージのスペースを消費します。これにより、大量の書類を一度に電子化し、保管しようとする場合に、追加のストレージスペースが必要になることがあります。
例として、一般的なオフィス文書1枚を電子化した場合、PDFのファイル容量はおおむね以下のようになります。
A4サイズ、テキスト中心の文書1枚を電子化した場合
モノクロ2値(白黒) |
約50KB |
グレースケール |
約200KB |
フルカラー |
約250KB |
ただし、これらはあくまで一般的な目安であり、いくつかの要因によってファイル容量は大きく変動します。例えば、文書に画像や写真などが含まれている場合、ファイル容量は更に大きくなります。一方で、文章量や画像が少ない書類であれば、ファイル容量はより小さくなる可能性も考えられます。
また、PDF作成時の圧縮設定によっても、ファイルの容量は変動します。圧縮率を高く設定すれば、ファイル容量は小さくできますが、同時に画質が劣化する可能性もあるため注意が必要です。さらに、電子化を行う際に使用するスキャナーや、PDF作成ソフトによっても、容量は異なる場合があります。
データの消失リスクと対策
電子データは、それ自体非常に便利な存在ですが、ハードウェアの故障やサイバー攻撃、誤操作などによる、データ消失のリスクも常に存在します。このようなリスクからデータを守るためには、適切なバックアップの実施とセキュリティ対策が不可欠になります。
バックアップは、データを別の場所に複製し保管しておくことで、データが失われた場合でも迅速に復元できるようにする対策です。バックアップは定期的に行うことが重要で、常に最新版のデータを保存しておくことが必要となります。
セキュリティ対策としては、アンチウイルスソフトの導入やファイアウォールの設定、データの暗号化が有効です。これらのセキュリティ対策システムを活用することで、サイバー攻撃からデータを守ることができます。また、誤操作によるデータ消失は、アクセス制限の適切な管理や、二段階認証の導入等によって対策することができます。
加えて、技術の進化は、使用している記憶メディアの陳腐化をもたらします。たとえば、かつて広く使用されていたフロッピーディスクは、今日ではほとんど使用されなくなりました。また、現行のコンピューターにはフロッピーディスクの読み取りドライブがほとんど搭載されておらず、情報の読み取りには外付けの専用ドライブが必要となります。このように、記録メディアが陳腐化すると、情報へのアクセス容易性が損なわれたり、最悪の場合、情報へのアクセスができなくなったりする等のリスクが発生します。
そのため、古い記憶メディアから最新のメディアへデータを定期的に移行させる「メディアのマイグレーション」は、データの長期的な保護に欠かせない対策の一つです。メディアのマイグレーションを行うことで、データの物理的な劣化や技術的な陳腐化からも守ることが可能になります。
これらのリスクを考慮し、適切な対策を講じることで、電子化のメリットを最大限に活かすことが可能となります。
まとめ
オフィススペースの高額化やテレワークの普及、スペースの不足等に対応するためのスペースセービング策として、オフィスの電子化は非常に有効です。加えて、書類の電子化は物理的なスペースを節約するだけでなく、情報へのアクセス性を高める効果があり、働き方の多様化や業務効率化を支えることが可能になります。さらに、オフィス空間の最適化やコスト削減、環境負荷の軽減など、多方面にわたるメリットも期待できます。
一方で、電子化された書類には、デジタルストレージのスペース圧迫やデータの消失リスクなどといった、電子データならではの課題も存在します。これらのリスクを考慮しながら、個々の状況に合わせて電子化を適切に活用することが重要です。
書類の電子化を通じて、オフィスのスペースを有効活用し、業務の効率化を実現しましょう。
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