オフィス移転前の書類削減!大量の紙文書を効率的に整理する方法
オフィスの移転にともない、移転先に保管しきれない書類を電子化したいというご相談をよくいただきます。
オフィス移転では、書類の保管スペースが手狭になってしまうという問題がしばしば発生します。ところが、移転プロジェクトでは空間・オフィス計画、ICT計画、引越し計画等、重要なタスクが膨大にあるため文書削減までなかなか手がまわりません。やがて、引越し準備のタイミングで文書削減活動を開始しますが、山積している書類を削減するのは混乱をまねきます。個々の従業員にそのやり方をゆだね、削減が思うように進まなかったり、捨ててはいけない書類を廃棄してしまったりと様々な問題が発生してしまいます。
そこでオフィス移転で発生する書類の課題と、適切な管理のための進め方にについて解説いたします。オフィス移転プロジェクトのメンバーでいらっしゃる方はぜひご一読ください。
なお、ペーパーレス化の進め方についてをご覧になりたい方にはこちらの記事がおすすめです。
►ペーパーレス化したいが何から手をつければよいのかわからない方向け、ペーパーレス化を進める5つのポイント
また、すでに紙文書を電子化することが決まっていて、電子化の進め方をご覧になりたい方にはこちらの記事がおすすめです。
► 紙文書を電子化したいが何から手をつければよいのかわからない方向け、電子化を進める5つのポイント
目次[非表示]
- 1. オフィス移転の書類の扱いにおける課題
- 2.オフィス移転の文書削減でやるべきこと
- 2.1.文書削減における方針・計画を策定する
- 2.2.収納レイアウトを設計する
- 2.3.保有量を調査し、削減量の目標値を算出する
- 2.4.廃棄ルールを策定する
- 2.5.保管ルールを策定する
- 2.6.電子化ルールを策定する
- 2.7.書類を仕分け、廃棄する
- 3.オフィス移転の文書管理の準備期間
- 4.オフィス移転後の文書管理を維持定着させるために
- 5.まとめ オフィス移転の際には文書管理の環境整備を!
オフィス移転の書類の扱いにおける課題
オフィス移転には、テレワーク導入に伴う縮小移転をはじめ、事業拡大を目的とする拡大移転があります。他にも、事業統合による縮小移転、BPO対策としてバックアップ拠点整備を目的とした分散移転など様々なものがあります。移転プロジェクトで問題になるのがオフィス内で保管している書類の削減です。書類の削減活動においては次のような課題があります。
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書類の削減が進まない
書類の削減活動において、ルールを定めず個々の裁量にゆだねてしまうと「多忙を理由に削減活動が進まない」「重要な書類を担当者の判断で廃棄してしまった」いう問題が発生します。 -
書類の誤廃棄や紛失が発生してしまう
オフィス移転では検討すべき事項がたくさんあるために、書類の扱いが後回しになってしまいがちです。慌ただしい作業では、誤って書類を廃棄してしまったり、書類を紛失してしまったりするリスクが発生します。 -
とりあえず倉庫に移管してしまう
書類の削減に十分な時間を取れない場合、移転先に保管しきれない書類を「とりあえず倉庫移管する」ということがあります。後の運用を考えず、移管リストの作成をおろそかにしてしまうと、書類がどの箱に入っているのかわからず見つけられなくなってしまいます。また、保存期限を明確にしておかなかった場合、倉庫に半永久的に保管することになり、保管費用の負担が重くなってしまいます。
オフィス移転は、情報資産の棚卸しができる絶好のタイミングです。同時に、ペーパーレス化など紙に束縛されない環境構築も可能です。移転を「ワークスタイルの変革」の機会ととらえ、計画的に文書削減、文書管理を検討することをおすすめします。
オフィス移転の文書削減でやるべきこと
では、オフィス移転をきっかけとした書類を適切に管理するための取り組みについて、一般的な流れに沿ってご紹介します。
文書削減における方針・計画を策定する
- 文書削減を開始にあたりプロジェクトを発足。文書削減の目的や方針を明確にし、計画をたてていきます。
文書削減の目的について
「移転先のキャビネットスペースが縮小されるため書類を削減する」等がその目的とされますが、オフィス移転は「ワークスタイルの変革」に絶好のチャンスです。削減だけにとどめず、文書管理を見直す機会となります。
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削減以外の目的(例)
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- 目的・方針・計画は全職員に周知します。
- 文書削減活動では、実務に影響が出ないよう、数カ月にわたりしっかりと実行できる期間を設定します。文書削減活動の期間を確保することを考慮し、移転から逆算して1年前にはルール策定まで完了させることを推奨します。
文書削減を成功させるコツ!
文書削減を成功させるコツは、トップダウンで行うことです。トップがプロジェクトを発足させ、プロジェクトメンバーは各部の部長が、各課員を使命していただきます。各部・課から担当者を選任することで、当事者意識をもっていただくことができます。
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収納レイアウトを設計する
移転後の書類の配置を構想します。
- キャビネットや収納エリアのレイアウト設計を行い、どれくらいのキャビネットを保有できるのか明確にします。各部にキャビネットを割り当て、周知します。
- レイアウトを設計する際、共有の資料(例えば広報誌やカタログ類、書籍など)や長期保存用に執務室以外の場所に資料室を設けることで、執務室がキャビネットに圧迫されることなく、快適なオフィスを構築できます。
保有量を調査し、削減量の目標値を算出する
オフィス内の書類の量を把握します。
<保有量の調査>
- 部門ごとに保有量を計測します。
- 保有量はファイルメーターで計測します。
「ファイルメータ―」というのは、書類を積み上げたときの高さをメートル単位で測ったもので「fm」という単位で表します。積み上げた書類の厚みの和になります。例えば、高さが5mだった場合「5fm」というように表します
キャビネット保管書類におけるファイルメータ―計測の一例:
部門ごとに保有量を計測する際、個々の机上や引き出し内に収納されている共有書類(本来、部門共有のキャビネネットで保管するべき書類)も計測しておきます。
- 同時に部門ごとにどのような書類を持っているか明確にします。
ファイルの背表紙をリストアップするのではなく、書類の種類を把握します。
例
契約書、ISMS文書、広報誌、書籍、役員会議事録、プロジェクト資料、技術文書など
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<目標値の算出>
- 削減目標値を算出します。
- 移転先の保管量÷現在の保有量=削減後に目指す文書量
現在の保有量−削減後の目標値=削減対象となる文書量
計算例 移転先の保管スペースが、90㎝幅の4段キャビネット×20本分だった場合、 移転先で保有できる量は0.9fm×4×20=72fm 現在の保有量が200fmの場合、72÷200=0.36 現在の36%まで減らす必要があるため、削減目標は64%となります。 |
- 新規で毎年資料が増えていく場合は、増加する分を考慮しておく必要があります。
- 部門によって、最近新設された部門や直近で書類整理を行った部門では全社一律の目標値だと難しい場合もあるため、考慮が必要です。
*書類の量を把握する手法につきましては以下の記事でもご紹介しています。
廃棄ルールを策定する
書類の廃棄基準や廃棄手順など、廃棄ルールを明確にします。
- 廃棄基準は、文書管理規定では判断できないこともあります。基準を具体的に、明確にしておくことが重要です。
- 廃棄書類は「一般書類」と「機密書類(個人情報を含む)」に区分けします。機密書類を廃棄する際は、機密文書廃棄サービスを提供している専門会社に委託すると安心・安全です。
- 特定個人情報を含む機密文書を削除した場合は、削除又は廃棄した記録を保存する必要があります。特定個人情報に限らず個人情報や機密文書については、誤廃棄を抑制するため、廃棄書類リストを作成し他の書類とは混在しないようにしておくことをおすすめします。
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廃棄ルールは、書類削減の目的や削減目標値とあわせて、チラシやポスターなどにし明確にすると削減活動が進めやすいです。
廃棄基準例
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廃棄手順で検討すべき項目例
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保管ルールを策定する
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主管部門の明確化
ISMS文書など、社内で重複して保管している書類については、どの部門が保管するのか主管部門を明確化します。 -
保管と保存の場所
良く使う書類は執務室内に「保管」、あまり使わなくなった書類は執務室外に「保存」など、書類のライフサイクルにあわせて保管・保存する場所を明確化します。
書類のライフサイクルは「発生→活用→保管→保存→廃棄」と5ステージに分類されます。 - 個人文書・共有文書の扱い
「組織で保管するべき書類や、案件が完了した書類は個人の机で保管せず、部門のキャビネットに移管する」など、共有文書についてルール化します。共有文書を属人化しないことが大切です。 -
外部倉庫を活用する場合
以下のように管理することが重要です。
►保管台帳の作成
保管書類台帳を作成し、外部倉庫に何を移管しているか明確化します。保管書類台帳には必ず、保存年限を明記します。
►移管手順の策定
外部倉庫移管のための手順を定めます。担当窓口、移管の依頼方法、取り寄せ方法、リテンション管理(計画的な保管期限の管理)などをあらかじめ策定します。 - 外部倉庫ではなく社内書庫や資料室を設ける場合
このような場合も、保管一覧表を作成しておくことで、保管・保存書類を把握できます。
電子化ルールを策定する
文書削減においては、電子化(PDF化)すれば書類を廃棄できる、外部倉庫に移管しても問題ないという書類もあるはずです。また、離れた場所から閲覧したい書類が発生することがあります。そのため、文書削減活動に入る前に、電子化における方針や電子化の基準、スケジュールなどを計画しておきます。
- 誰が電子化を行うか(自社(各部・専任部門・派遣社員)で行うか、外部に委託するか)
- 何を(どのような書類を)電子化するか
- いつ電子化するか(移転前か、移転後か、どれくらいの期間をかけて行うか)
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どうやって電子化を進めていくか
►電子化する書類の準備、回収
►電子化の手法(電子化作業の仕様)
►電子化後の書類の取扱い - 電子化費用はどこの経費とするのか(各部の経費か、プロジェクトの費用か)
►自社で行う場合:機材購入費用など
►派遣社員を雇用する場合:派遣社員に係る費用
►外部委託する場合:電子化委託費用
日常業務の合間に移転の準備を行い、その傍らで電子化をするのは極めて困難です。そのため、移転における書類の電子化は、多くの組織が外部委託を行っています。移転間際の書類整理の段階で電子化の予算を取ることは難しいので、移転プロジェクト発足の際にあらかじめ電子化にかかる費用を考慮しておくとスムーズに進められます。
*スキャニング代行会社への見積依頼の方法についてはこちらの記事でご紹介しています。
~何を(どのような書類を)電子化するか~
何を(どのような書類を)電子化するか、電子化の対象となる書類の基準が決まっていないと、書類を整理する際、現場が混乱します。電子化の基準を定め、周知しておくことが重要です。
電子化基準例
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書類を仕分け、廃棄する
廃棄ルール、保管ルール、電子化の方針・計画に従い、各部門にて、書類の廃棄、整理、仕分けを行います。まずはじめに行うことは、
- 確実に不要と判断できる書類・物品、保管しておく必要のない重複書類を廃棄する
- 自部署で保管する必要がない書類・書籍は、主管部門に移管するなど整理する
この2点が完了したら、文書削減活動がスタートです。
- ②の倉庫に移管する書類は、倉庫移管リストを作成する
書類を、①廃棄、②倉庫移管、③電子化後廃棄、④電子化後倉庫移管の4つに仕分けていく
③と④に対する電子化作業は仕分けのタイミングでは行わないので、後で区別できるようにファイルの背表紙にシールなどを貼り付けて区別しておくという方法があります(下図参照)。②の倉庫に移管する書類は、倉庫移管リストを作成する
カラーシールを使った書類の仕分けの例:
オフィス移転の文書管理の準備期間
これら「文書削減における方針・計画の策定」から「電子化ルールの策定」に至るまでの検討は早い段階で進められると良いのですが、「収納レイアウトの設計」はなかなか早い段階では決まらないため、「削減目標値の算出」に進められません。また、「書類の廃棄」は、あまり早い段階から初めてしまうと、日常的に使用している書類があるので混乱が生じます。整理してから移転までに長期間空いてしまうと、その間に書類が増えてしまうこともあります。
企業風土や企業規模によりますが、おおむね下記程度の期間はかかります。
文書削減における方針・計画策定 |
半月~1カ月 |
収納レイアウトの設計~削減量目標値の算出 |
2カ月程度 |
廃棄・保管・電子化ルールの策定 |
2カ月程度 |
書類の仕分け・廃棄 |
2~3カ月 |
* 電子化作業期間は含みません
電子化の作業期間については実例を交えてこちらの記事で解説しています。
<移転間際で文書削減に着手する場合>
上記期間がとれず、文書削減に着手するのが移転間際になってしまった場合はぜひご相談ください。
別のソリューションをご提案いたします。
オフィス移転後の文書管理を維持定着させるために
文書管理は環境を整備した後、継続して維持することが大切です。不要な書類がないか、定期的に棚卸しを行いましょう。移転時に作成した廃棄ルール、保管ルール、電子化ルールにもとづき、規定を見直すことも維持するためには欠かせません。
まとめ オフィス移転の際には文書管理の環境整備を!
今回は「移転における文書削減」にテーマを絞り執筆しました。オフィス移転は、文書管理の環境整備を行うチャンスです。文書管理の環境整備が進むことで「ワークスタイルの変革」につなげられます。移転計画の時点で書類の取扱いを検討することで、効果が得られます。
また、移転における書類の電子化においては外部委託を行うことも視野に入れて、あらかじめ電子化にかかる費用を考慮しておくとスムーズに進められます。
移転を機に、紙運用の見直しなど自社の情報資産を管理する体系を改善することで、競争力の向上につなげられます。