図面の電子化がもたらす業務効率化とスペース削減の実例~製造業・建設業~
近年、デジタル技術の進化が書類の電子化を後押しする一方、依然として多くの現場では紙の図面が使用され続けています。紙図面はその視認性の高さや物理的な取り扱いの容易さなどが評価されていますが、保管スペースの不足、管理の煩雑さ、劣化や破損のリスクなど、その運用における課題も少なくありません。
本記事では、図面の電子化を導入したお客様の成功事例を交えながら、紙図面が持つ利便性とそれに伴う課題、および図面を電子化することのメリットについて詳しく解説します。
目次[非表示]
- 1.紙図面が使われている理由とその課題
- 1.1.保管スペースの不足
- 1.2.図面管理の煩雑さ
- 1.3.劣化と可読性の低下
- 1.4.図面の更新と共有の難しさ
- 2.図面電子化のメリット
- 2.1.スペース削減の観点からのメリット
- 2.2.効率化の観点からのメリット
- 3.図面電子化の実例
- 3.1.具体的な業務/ユースケース
- 3.2.紙図面が使われている理由とその課題
- 3.3.電子化することによる具体的な効果
- 3.4.当社における成功事例 製造業編
- 3.5.当社における成功事例 建設業編
- 4.まとめ
紙図面が使われている理由とその課題
ペーパーレス化が進む中でも、紙図面は依然として多くの現場で使用されています。これは、従来からの慣習で使い慣れていることや、視認性が高いこと、参照時にPC等の機器を必要とせず、物理的な取り扱いが容易であることなどが主な理由です。また、紙図面はその場に広げて複数人が参照でき、作業やディスカッションがしやすいという利点もあります。
しかし、紙図面にはいくつかの課題が存在します。主な課題としては、以下のような例が挙げられます。
保管スペースの不足
紙図面の課題としてよく挙げられるのが、図面によるスペースの占有です。2023年度に当社に寄せられたお問い合わせの中で、最も多く挙げられた課題も「保管スペースの不足」でした。図面はA2やA1、A0などの大型の資料も多く、一般的なオフィス文書よりも多くの保管スペースを要します。事務所や倉庫などの限られたスペースでは、保管場所が不足するだけでなく、他の業務スペースの確保までもが困難になってしまいます。
当社には日々、電子化に関するさまざまなお問い合わせが寄せられています。その他の課題についても詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
►関連記事:契約関連書類を中心に電子化が加速した2023年度
図面管理の煩雑さ
膨大な量の紙図面は、保管スペースを圧迫するだけでなく、その管理も煩雑になりがちです。図面の収納ケースが倉庫内で雑多に積み上げられていたり、複数のキャビネットや保管棚でばらばらに保管されていたりするケースも珍しくありません。
このような場合、目的の図面を探すために多くの手間がかかってしまうほか、紛失や誤配置のリスクも常に存在します。
劣化と可読性の低下
紙図面は、劣化や破損、あるいはそれに伴う可読性の低下が発生するリスクも持ち合わせています。図面は業務上、現場に持ち込んで使用されることの多い資料です。そのため、物理的な取扱いが容易で、持ち運びもしやすい紙での運用が好まれる場合も多くあります。
しかし一方で、紙図面は時間の経過や使用環境、保管環境などの外的要因による影響を受けやすく、劣化や破損が発生しやすいというリスクも内包します。特に破れや汚れ、変色などによる図面の劣化は使用頻度が高いほど進行しやすく、これらによって図面が破損したり、可読性が低下したりすると、重要な情報が失われてしまう危険性があります。
図面の更新と共有の難しさ
紙図面は、情報の共有がしづらく、全員に最新の情報を迅速に伝えることが難しいという課題も持ち合わせています。紙図面に記載されている情報を共有するには、紙図面そのものの輸送または送付が必要です。そのため、情報共有にタイムラグが発生してしまい、関係者間で古い情報と新しい情報が混在してしまう危険性があります。
また、紙図面の場合、版管理の難しさも課題として挙げられます。設計や工程の全面的な見直しにより図面の再作成が必要となる場合、新たに作成した版の作成日時や作成者、最新版はどの版なのか、などの情報を明確に記録し、管理する必要があります。しかし、これらの版情報をすべての図面で徹底的に管理するのは容易ではなく、相当な手間がかかることも事実です。さらに、旧版の図面の破棄または適切な保管、最新版の図面の配付などの作業も併せて行わなければならず、共有にはより一層の手間と時間がかかります。
これらの紙図面の課題を解決する手段として重要なのが、図面の電子化です。
図面電子化のメリット
図面の電子化は、紙図面の使用に伴うさまざまな問題を解決し、業務の効率化に大きく寄与します。以下では、図面を電子化することによって得られるメリットについて、「スペース削減」と「業務効率化」の2つの観点から具体的にご紹介します。
スペース削減の観点からのメリット
①保管スペースの削減
図面の電子化は、物理的な保管スペースの節約に大いに役立ちます。電子化した図面は、紙図面のように専用の保管棚や収納ケース、キャビネットなどを必要としないため、保管スペースを大幅に削減できます。
また、空いたスペースはミーティングスペースや休憩スペースなど、異なる目的に使用することができ、オフィススペースの最適化にも寄与します。
②コスト削減
保管スペースの減少は賃貸料や維持費の削減にもつながります。特に都市部などの高額な賃貸スペースを利用している企業にとって、保管スペース確保のためのコストは負担が大きくなりがちです。図面を電子化し、保管スペースを削減することで、その分のコストも削減することができます。
効率化の観点からのメリット
①図面管理のしやすさ
電子化した図面は電子データとして保存されるため、検索が非常に簡単です。紙の図面を閲覧するには、保管場所まで物理的なファイルを探しに行かなければならないという手間がありますが、電子化された図面はパソコンさえあればいつでも、どこからでも瞬時に情報にアクセスできます。フォルダ名やフォルダ構成を工夫したり、管理台帳を作成したりすることで、さらなるアクセス性向上を見込むことも可能です。
また、電子化したデータを活用し、アクセス性を向上させるには、ファイル名の命名規則も重要です。電子化した図面のデータをリネームする際には、日付や版数などを含んだファイル名とすることで、作成日時が一目でわかるようになり、バージョン管理が容易になります。
これにより、古い図面を誤って使用するリスクが減少し、業務のミス防止にも役立ちます。
②劣化防止
図面を電子化し、電子データを参照するようにすることで、原本にあたる紙図面の使用頻度を下げることができます。紙図面を頻繁に持ち出したり、参照したりする必要がなくなれば、常に適切な環境下で図面を保管しておくことができ、劣化が進行しづらくなります。また、紛失や破損のリスクも大幅に低減されます。
加えて、電子データは基本的に劣化しないため、紙図面を電子化して保存することで、長期間にわたって鮮明な状態で情報を保持することも可能です。既に劣化が進行している図面でも、データ化し保管しておくことで、可読性を保ったまま保管することができるようになります。
③情報の共有化
電子化した図面は、クラウドストレージや社内ネットワーク、メール等を利用して即座に共有することができます。電子データは場所や時間を問わずして送受信・閲覧することができるため、紙の図面を輸送する場合と比較すると、圧倒的に共有がスムーズです。
情報の連携や共有にかかるタイムラグがなくなり、リアルタイムでの情報共有が実現することで、業務の効率化が期待されます。
以上のように、図面の電子化はスペースの削減と業務の効率化の両面から、さまざまなメリットをもたらします。
図面電子化の実例
最後に、図面の電子化が実際の業務でどのように活用されているか、またその効果について、実例を通じてご紹介します。具体的なユースケースや実際の成功事例から、図面の電子化が課題解決や業務改善にどのように寄与したかを見ていきましょう。
具体的な業務/ユースケース
製造業や建設業における図面の活用は非常に多岐にわたり、設計段階から保守・メンテナンス、業務後の管理まで、多くの業務で欠かすことのできないツールです。
製造業では、製品の最終設計を確定する際、詳細設計図を用いてレビューやフィードバックを行います。生産計画や工程管理においても、作業指示や進捗管理のために製造工程の詳細を示す図面が用いられ、品質管理では、図面を基に規格や寸法確認を行い、品質検査や試験が行われます。保守・メンテナンスでも、効率的な修理や記録管理のためには、設備図や配線図が欠かせません。さらに技術文書の管理においても、技術仕様書やマニュアルに付随する図面が常に管理・参照・更新されます。
加えて、建設業でも設計段階でのレビュー用設計図や、施工管理のための施工計画の詳細を示す図面などが用いられています。品質管理では建築中の規格や寸法を図面で確認し、オフィスビルの保守作業など、メンテナンスの過程では、配線図などの図面も参照されます。また、プロジェクト中に変更された設計があれば、設計図や技術仕様書を更新し、その管理も行われます。
紙図面が使われている理由とその課題
紙図面が使用される理由の一つには、紙という媒体の視認性の高さがあります。例えば、大きなテーブルに紙図面を一枚広げるだけで、チームメンバー全員で資料を参照しながらディスカッションをすることができます。紙図面であれば、現場に大画面のディスプレイがなくても参照でき、修正やメモをその場で書き加えることも可能です。さらに、寸法測定や製品との比較も簡単で、迅速な指示出しや確認作業にも優れています。また、図面を持ち歩きながら作業する際、紙であれば折りたたんでコンパクトに持ち運ぶことができ、軽量であるため取り扱いも容易です。
一方で、紙図面の保管には大量のスペースが必要となるため、保管にかかるスペースやコストの負担が大きくなります。ほかにも、図面を参照するためには倉庫から取り寄せたり、あるいは大量の紙の中から目的の図面を探したりする必要があり、業務効率の低下や情報共有の遅れを招きます。さらに、紙図面は劣化や破損をしやすく、可読性が低下することで情報が失われるリスクもあります。
電子化することによる具体的な効果
図面の電子化によって期待される効果はさまざまです。中でもまず挙げられるのは、物理的な保管スペースの大幅な削減です。紙の保管量が減るだけでなく、専用の保管棚やキャビネットも不要になるため、限られたコストとオフィススペースを最適化し、有効に活用することができます。また、電子データはパソコンで簡単に検索・アクセスできるため、図面の管理および活用が容易になります。
加えて、クラウドストレージや社内ネットワークを利用することで、場所や時間を問わずに情報を即座に共有できるため、業務の効率化やリアルタイムでの情報共有も実現します。さらに、電子化された図面は基本的に劣化や破損をしないため、可読性を保ったまま、長期間にわたって情報を保管できます。
このように、紙の図面に関する課題は、電子化によって解決することができます。
当社における成功事例 製造業編
当社では、長年にわたってさまざまな書類の電子化を行っており、図面の電子化についても多数の導入実績があります。中でも、特に図面の使用頻度が高い製造業のお客様においては、電子化によって保管スペースや業務効率などの課題を解決された事例が多数見られます。
ここでは、製造業のお客様の事例から、2つの成功事例をご紹介します。
①機械製造業A社様
対象資料 |
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紙図面による課題 |
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電子化による効果 |
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<電子化導入前の課題>
完成図書の電子化を実施された、機械製造業A社様の事例です。お客様は完成図書を自社で電子化し、原本は倉庫に保管する運用を行っていましたが、画像がつぶれて必要な部分が判読できないデータも多く、結局は原本を閲覧するために倉庫まで足を運ばなくてはなりませんでした。また、倉庫に保管している原本の中には、所在が分からなくなっていたものもありました。
そこで、原本の参照機会を減らし、情報検索の手間と紛失リスクを抑制するため、スキャニング代行会社への依頼を決定されました。
<電子化の導入効果>
完成図書を電子化したことで、詳細を判別できないデータがなくなり、原本を倉庫まで探しに行く手間がなくなりました。これにより、業務フローが大幅に改善されました。さらに、自席のPC画面上で即座に完成図書を参照できるようになったため、顧客からの問い合わせに対しても迅速に対応することができるようになりました。
加えて、電子化された図面を利用することで、原本の頻繁な取り出しが不要になり、紛失のリスクを回避することができました。また、遠隔地からも情報を参照することができるため、テレワークの推進にも寄与しました。
当事例の詳細はこちらをご覧ください。
►導入事例:機械製造業A社様 完成図書の電子化
②大手自動車メーカーA社様
対象資料 |
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紙図面による課題 |
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電子化による効果 |
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<電子化導入前の課題>
特許出願資料の電子化を実施された、大手自動車メーカーA社様の事例です。特許出願資料は書庫に保管されており、資料を閲覧したい場合、都度管理部門に出庫依頼をして対象の資料を箱ごと取り寄せる必要がありました。また、特許出願資料には図面からメモ書きまで、さまざまなサイズの書類が混在しており、量も膨大に保管されていたため、書庫の保管スペースと保管コストを圧迫しているという問題も生じていました。
そこで、資料取り寄せにかかる手間や、担当部門の負担を軽減し、保管スペースと保管コストを削減するため、当社のスキャニングサービスを導入いただきました。
<電子化の導入効果>
電子化によって、過去の特許出願資料の検索や閲覧が迅速に行えるようになり、業務処理のスピード化が実現しました。また、これにより資料の取り寄せにかかる手間や時間も軽減できたほか、仕様の出庫処理を行っていた管理部門の業務負担も軽減され、人件費の削減にもつながりました。さらに、電子化後の書類は廃棄することで、それまで資料で占有されていたスペースとコストの有効活用ができるようになりました。
当事例の詳細はこちらをご覧ください。
►導入事例:大手自動車メーカーA社様 特許出願資料の電子化
当社における成功事例 建設業編
続いて、建設業のお客様の事例から、2つの成功事例をご紹介します。
図面の電子化について、建設業のお客様からも多くのご相談をいただいています。建設業でも未だ広く使用されている紙図面ですが、それに伴う課題もまた多く存在しているのが現状です。その中には、電子化によって解決できる課題も多数存在します。
①建設会社A社様
対象資料 |
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紙図面による課題 |
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電子化による効果 |
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<電子化導入前の課題>
工事報告書類や図面等の電子化を実施された、建設会社A社様の事例です。お客様の事務所では、大量の工事報告書類や図面を保管するためのスペースが、執務スペースを圧迫していました。さらに、整理しきれていない古い書類が雑多に保管されていたため、必要な図面や書類を探す際には、かなりの手間と時間を要していました。
そこで、事務所のレイアウト変更に際し、工事報告書類のPDF化を行うこととなりました。
<電子化の導入効果>
図面など、大型の資料を含む書類を電子化し、紙の書類を廃棄したことで、保管スペースの大幅な削減を実現しました。さらに、PDF化作業の事前確認工程の過程で、書類の棚卸し作業も行うことができ、同時に資料整理も行うことができました。
加えて、紙で保管されていた資料が電子化されたことで、検索性が大幅に向上し、探したい工事報告書類が即座に見つかるようになりました。また、事務所のレイアウト変更に関しても、書類の保管場所を考慮する必要がなくなり円滑に計画を進めることができるようになりました。
当事例の詳細はこちらをご覧ください。
►導入事例:建設会社A社様 工事報告書類の電子化
②総合建設会社A社様
対象資料 |
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紙図面による課題 |
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電子化による効果 |
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<電子化導入前の課題>
図面や計算書、設計記録などの電子化を実施された、総合建設会社A社様の事例です。お客さまはさまざまな建設プロジェクトで生じる設計資料を、紙やマイクロフィルムで都内の倉庫に保管されていましたが、情報共有に多くの課題がありました。特に地方の事業所で資料の閲覧が必要となった場合は、取り寄せにも輸送にも、多大な手間と時間がかかります。課題を解決するための電子化作業も、自社内で行うには多くの時間が必要となり、現実的ではありませんでした。
そこで、当社のスキャニングサービスの導入をご検討いただくこととなりました。
<電子化の導入効果>
資料を電子化することで、設計資料をASPサーバーで情報共有できるようになり、最も課題としていた情報の連携と共有が容易にできるようになりました。これにより、「倉庫から資料を取り寄せて担当事業所に輸送する」という時間と手間が削減され、業務スピードの向上が実現しました。
加えて、書類や図面をサーバーへ登録するための電子化作業の負担がなくなり、紙の図面や書類、マイクロフィルムを共有化するための手間も省力化されました。さらに、電子化したデータを活用することで、日常業務内で原本を参照する必要がなくなり、遠隔地での保管も可能になりました。この分散管理により、災害時でも原本の安全性を確保できるようになりました。
当事例の詳細はこちらをご覧ください。
►導入事例:総合建設会社A社様 倉庫で保管している紙・マイクロフィルムのオンデマンド電子化
まとめ
紙図面はその利便性から、現在も多くの現場で依然として使用されています。一方で、保管スペースの不足や管理の煩雑さ、劣化による可読性の低下、更新・共有の難しさなど、さまざまな課題も抱えています。これらの課題を解決する手段として、図面の電子化が効果的です。図面を電子化することにより、保管スペースの削減やコスト削減、劣化防止や情報の共有化など、多くのメリットを得ることができ、業務の効率化に寄与します。
電子化による業務改善の可能性を、ぜひご自身の現場でも検討してみてください。
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