履歴書を電子化して効率的に保管する方法:保管期間やセキュリティの問題も解決!
企業の人事担当者が直面する課題の一つに、履歴書の適切な保管が挙げられます。履歴書は法令によって保管が定められている重要な書類であり、個人情報も多く含まれているため、その保管にあたっては細心の注意を払わなければなりません。しかし、紙の履歴書の保管には、スペースの不足やセキュリティの問題など、数多くの課題が伴います。これらの課題を解決する方法として今注目を集めているのが、履歴書の電子化です。
本記事では、履歴書の保管期間や電子化によるメリット、スキャニングサービス代行会社の選定ポイントなどについて、詳しくご紹介します。
目次[非表示]
- 1.履歴書の保管に関する法律と期間
- 1.1.履歴書の保管期間について
- 1.2.履歴書の保管に伴う課題
- 2.履歴書の電子化と課題解決
- 3.電子化した履歴書の適切な保管方法
- 4.電子化による業務効率化のメリット
- 4.1.検索性の向上
- 4.2.情報の共有化
- 4.3.履歴書の電子化による業務効率化:テレワーク推進の成功事例
- 5.スキャニングサービス代行会社の選び方
- 6.まとめ
履歴書の保管に関する法律と期間
履歴書の保管に関与する法律として主に挙げられるのは、労働基準法と個人情報保護法の2つです。労働基準法第109条では、保管期間が明確に定められており、また個人情報保護法では、個人情報として法律に基づき厳格な管理を行うことが求められます。
はじめに、履歴書の保管に関する法的要件と、それに伴う課題について解説します。
履歴書の保管期間について
履歴書の保管期間は、主に労働基準法第109条によって規定されています。同法は2020年の改正により、保存すべき記録の期間を3年から5年に延長しました。2024年10月現在、この法律では以下の記録について「労働者の退職または死亡の日を起算日として5年間(当分の間は3年間)」の保管を義務付けています(労働基準法施行規則 第56条)。
<労働基準法第109条の対象となる記録>
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 履歴書や雇入決定関係書類、契約書など、雇入れに関する書類
- 解雇決定関係書類など、解雇に関する書類
- 診断書、領収関係書類など、災害補償に関する書類
- 賃金に関する書類
- その他労働関係に関する重要な書類
履歴書は、上記のうち「雇入れに関する書類」に該当するため、5年間の保管が必要となります。(「改正労働基準法等に関するQ&A」より)
また、履歴書は個人情報に該当し、個人情報保護法も適用されます。2024年10月現在、個人情報保護法は履歴書に対して具体的な保管期間を定めてはいませんが、利用目的の特定や目的外利用の制限、安全管理措置の構築など、個人情報保護法に基づいた適切な管理を行うことが求められています。
履歴書の保管に伴う課題
前述の通り、履歴書は、適切な管理状況の下で5年間保存することが求められています。しかし、紙ベースでこれらを実行するには、いくつかの課題が伴います。
まず、5年間の長期保存を想定した場合、物理的な保存スペースの確保が大きな課題となります。特に保存すべき履歴書が大量にある企業では、専用の保存スペースの確保が困難となってしまいがちです。加えて、紙の履歴書は検索性が低いため、情報へのアクセスに時間がかかり、業務効率を低下させる可能性があります。さらに、紙の書類はアクセス制限を設けることが難しく、保管状況によっては持ち出しによる盗難や紛失が起こり得るため、情報漏洩のリスクが高まります。
これらの課題を解決するために有効なのが、履歴書の電子化です。
履歴書の電子化と課題解決
電子化とは、紙の履歴書をスキャナーで読み取り、PDFやTIFF、JPEGなどの電子データに変換するプロセスです。作成された電子データは、その後クラウドストレージやファイルサーバー、あるいは文書管理システムによって保管されます。
電子化は、紙の履歴書にまつわる課題を解決するための有効な手段となります。
履歴書の電子化で解決できる課題とは?
電子化によって解決できる課題には、以下のようなものが挙げられます。
①スペースの節約
紙の履歴書を電子化することで、膨大な量の書類を物理的に保管する必要がなくなります。
オフィスや倉庫のスペースを資料の保管のためだけに使うのではなく、有効活用することにより、賃料や保管費用の削減につながり、より効率的なオフィス環境を構築することが可能です。これは特に、スペースが限られている中小企業にとっては、大きな利点となります。
②セキュリティ向上
電子データは、アクセス制限によって保護することができるため、紙の書類に比べて高いセキュリティを実現します。具体的には、情報へのアクセスを制限し、限られたユーザーのみが閲覧できるように設定を行うことで不正アクセスを防止したり、データの移動やコピーを制限することで、不正な持ち出しを防止したりすることができます。
これにより、情報漏洩のリスクが大幅に減少し、企業全体のセキュリティ体制が強化されます。
③紙の劣化・破損防止
紙の履歴書を電子化することで、劣化を防止し、情報を長期間にわたり鮮明に保持することが可能となります。紙は時間の経過や保管環境、自然災害などの外的要因による影響を受けやすく、保管中に劣化や破損が発生し、情報が読み取りにくくなるリスクがあります。一方で、電子データは基本的に劣化しないため、長期間の保管であっても一定の可読性を保ち続けることができます。
また、既に劣化や破損が発生している履歴書についても、紙の使用頻度を下げ、適切な環境下で保管することで、劣化の進行を防止することができます。
履歴書の電子化による課題解決:スペース節約の成功事例
実際に弊社で電子化を行い、履歴書の保管スペース節約に成功されたお客様の事例をご紹介します。
A社様では、急激に増加する人事書類の管理が煩雑化し、保管スペースも圧迫されていたことから、人事関係書類の電子化を決定されました。その結果、執務室内の書類の保管スペースを95%削減することに成功し、保管コストを大幅に抑制しました。さらに、書類の一元管理も実現され、テレワーク中でも人事書類の確認が可能になるなど、業務が大幅に効率化されました。
当事例の詳細はこちらをご覧ください。
►導入事例:大手食品メーカーA社様 人事書類の電子化
電子化した履歴書の適切な保管方法
さまざまなメリットのある履歴書の電子化ですが、その実、電子化による利点を最大限に活用するためには、電子化したデータをどのように保管し管理するかも重要です。
次に、電子化された履歴書の適切な保管方法について詳しく見ていきましょう。
電子データの保管期間について
履歴書を電子化した後も、法律に基づく保管期間を遵守し、紙での保管と同様に適切な管理を行うことが求められます。労働基準法で保管が義務付けられている期間は「5年間」となっているため、この期間内は特に、電子データもしっかりとした管理を行わなければなりません。
複製が容易であるという電子ファイルの特性を生かし、バックアップやアーカイブ化をしっかりと行うことで、災害やシステム障害によるデータ損失のリスクを軽減できます。
また、履歴書はその特性上、不採用時や退職時に返還を希望する方もいます。そのため、原本は電子化後も一定の期間、保管しておくのがおすすめです。返還希望に対応するために電子化後の書類を保管する場合は、執務室内ではない、別の場所での保管も検討するとよいでしょう。
頻繁に手に取る機会がある書類は執務室やフロア内、そうでない書類は外部の倉庫などと保管場所を工夫することで、執務室内の保管スペースを節約することができます。
電子データの保管方法:データを安全に保管するためには
電子化された履歴書を使いやすく、かつ安全に管理するためには、クラウドストレージやファイルサーバーでの保管、あるいは文書管理システムの利用が特に有効です。これらを利用することで、データへのアクセスが容易になり、データを一元管理することができ、安全な保管が可能となります。
加えて、ユーザーごとにフォルダへのアクセス制限を設け、ファイルに対してはパスワードを付与することで、情報の取扱いを制限することも可能です。これらの対策を講じることによって、効率的かつ安全なデータ保管が実現します。
電子化による業務効率化のメリット
履歴書の保管に関する課題は、電子化によって解決することができます。しかし、電子化によってもたらされるメリットはそれだけにとどまりません。ここでは、履歴書の電子化による業務効率化の効果について、詳しくご紹介します。
履歴書の電子化は、人事管理の効率化を実現し、業務の効率を大きく向上させます。
検索性の向上
電子化により、検索性が格段に向上します。
電子化された履歴書は、ファイル名・フォルダ名の工夫やOCR処理などによってキーワード検索や全文検索が可能となり、名前や入社年度といった特定のキーワードを入力するだけで、関連する情報を素早く検索・取得することができるようになります。これにより、担当者は他の重要な業務に専念するための余裕が生まれるほか、作業ミスの低減も期待できます。
必要な情報へのアクセスが容易かつ迅速になることで、資料の検索や内容の確認、入力など、これまで時間がかかっていたさまざまな業務プロセスが短縮され、業務全体のスピード化につながります。
情報の共有化
電子データは、時間や場所、人数などの制限なく閲覧することが可能です。これにより情報が共有化され、効率的な業務運用ができるようになります。
まず、複数の担当者が同じデータへ同時にアクセスすることができるため、情報共有がスムーズになります。一枚の履歴書を担当者間で回覧したり、コピーの作成や原本の取り寄せなどを行ったりする必要がないため、担当者間でのタイムラグが発生せず、業務がスムーズに行えます。
また、電子化データであれば場所を選ばず、どこからでも容易に情報へアクセスすることができるため、テレワークの推進においても効果を発揮します。
履歴書の電子化による業務効率化:テレワーク推進の成功事例
実際に弊社で電子化を行い、テレワークの推進に役立てられたお客様の事例をご紹介します。
A社様では、採用に伴う雇用契約書や履歴書など、大量の人事書類を執務室内で保管しており、さまざまな課題に直面されていました。特に、テレワーク時には紙の書類を確認するために出社する必要があり、業務効率が低下するという問題がありました。そこで、こちらのA社様は人事関係の書類の電子化を決定し、60,000ページに及ぶ書類の電子化を実施されました。その結果、テレワークでも書類を閲覧できるようになり、紙の書類を確認するためだけの出社が不要となりました。これにより、業務効率の向上とテレワークの推進が実現しました。
当事例の詳細はこちらをご覧ください。
►導入事例:大手情報通信会社A社様 人事書類の電子化
スキャニングサービス代行会社の選び方
最後に、スキャニングサービスを取り扱う代行会社を選定する際の選び方について解説します。スキャニング代行会社を選定する際には、代行会社の信頼性とセキュリティ対策が重要なポイントです。
まず、信頼性の高い代行会社を見極めるためには、過去の実績や技術力、そしてセキュリティ対策についての確認が欠かせません。特に履歴書の電子化においては、セキュリティ対策を徹底している代行会社を選ぶことが不可欠です。
履歴書には個人情報が多分に含まれており、その取扱いやセキュリティには細心の注意を払う必要があります。そのため、ISMS認証(ISO/IEC 27001)やプライバシーマークなどの資格を取得していたり、セキュリティシステムによる管理を行っていたりと、セキュリティ対策を充分に徹底していることがわかる会社を選ぶことが重要です。
これにより、履歴書などの個人情報を預ける場合でも、安心して電子化を依頼することができます。
次に、代行会社の技術力についてもしっかりと確認しておきましょう。スキャン画像の鮮明さは、電子化後のデータの使いやすさにも少なからず影響を及ぼします。特に手書きの履歴書や、文中に細かいフォントや特殊記号が使用されている履歴書、写真類が貼付されている履歴書などでは、スキャンの精度やクオリティが低いと、データ化の際に情報が失われてしまう危険性もあります。
確認方法としては、ホームページなどから導入事例やお客様の声、技術的なサポート体制をチェックするほか、可能であればサンプルの提供を依頼することも有効です。
また、品質の管理はどのように行っているか、どのような管理体制が整備されているかどうかなど、品質管理についても併せて確認しておくことをおすすめします。
このように、信頼性とセキュリティを兼ね備えた代行会社を選ぶことで、電子化の導入はより効果的かつ安全に行うことができます。
まとめ
履歴書は労働基準法の規定により、「労働者の退職または死亡の日を起算日として5年」の間、厳格に保管することが求められています。履歴書の保管にあたっては、スペースの確保や情報の保護などといった課題がしばしば発生しますが、これらを解決するためには電子化が非常に有効です。
従来紙で保管していた履歴書を電子データに変換することで、保管スペースの削減や、セキュリティの向上が実現するほか、情報への迅速なアクセスも可能になります。さらに、電子化はテレワークの推進や業務処理スピードの向上など、業務の効率化という面からも非常に高い効果を発揮します。
また、履歴書は個人情報に該当し、個人情報保護法も適用されます。保管の際には紙、電子ともに、法律に基づいた適切な管理を徹底することが必要です。代行会社に電子化を依頼する場合には、充分なセキュリティ対策の実施や管理体制の整備、技術力など、信頼性の高さが重要な選定基準となるでしょう。
スペースの削減やセキュリティの向上など多岐にわたるメリットを取り入れて、今後の業務管理をよりスムーズに進めるために、ぜひ履歴書の電子化を検討してみてはいかがでしょうか。