図面電子化の実践ガイド:図面の電子化で業務効率化を実現!
情報化が急速に進む現代において、紙の資料や書類の電子化はもはや業務の効率化を図る上で欠かせないものとなりつつあります。その中でも、近年にわかにニーズが拡大しているのが図面の電子化です。紙の図面には一定の利便性があるものの、物理的な保管スペースの問題や、情報共有や検索にかかる手間、時間経過や物理的損傷による劣化や破損のリスクなど、多くの課題が存在しています。
本記事では、紙の図面を電子化するメリットと、電子化の際に考慮すべき重要なポイント、電子化を行うための具体的な手順について詳しく解説します。
目次[非表示]
- 1.紙図面の課題と電子化の必要性
- 2.電子化の利点
- 2.1.情報共有・業務効率化
- 2.2.省スペース化・クリーンオフィス
- 2.3.検索性の向上
- 2.4.劣化防止・可読性向上
- 2.5.BCP対策
- 3.電子化に際する注意点
- 3.1.高解像度スキャニングの必要性
- 3.2.読みやすさの確保
- 3.3.大型図面や特殊な形態の資料の取り扱い
- 3.4.ファイルサイズの管理
- 3.5.ファイルの検索性と管理
- 4.代行会社・外部サービスの活用方法
- 4.1.代行会社を選ぶポイント
- 4.2.代行会社に電子化を委託するメリット
- 4.3.外部サービスの活用手順
- 5.まとめ
紙図面の課題と電子化の必要性
紙の図面は、書き込みが容易にできる、モニターのない現場でも閲覧が可能であるなどの理由から現代でも広く活用されています。しかし一方で、さまざまな課題を持ち合わせていることも事実です。当社にも日々、紙図面の電子化に関する多くのご相談が寄せられています。
中でも多く挙げられるのが、「図面を保管するための物理的なスペースが不足している」という課題です。図面の中には、A2やA1、A0といった大型サイズのものや、大きな箱や筒、厚手のカバーなどに保管されているものも多く、どうしても保管スペースを圧迫してしまいます。また、その他の課題として、保存箱やキャビネットの引き出しなどで無造作に保管されており、目的の図面を探すのが大変であることや、図面が劣化しており取扱いが困難であることなども挙げられます。
このような課題を一挙に解決するのが電子化です。かさばる図面も電子化により、電子データとしてクラウドやサーバーに保存でき、物理的な保管スペースを大幅に削減できます。加えて、電子化された図面はサーバー等のデジタルストレージ上で管理されるため、情報の閲覧や共有も容易かつ迅速になります。例えば、営業所に保管されている図面も、原本を傷めることなく、いつでも、どこからでも容易に閲覧が可能です。さらに検索機能を活用することで、必要な情報により迅速にアクセスすることもできるようになります。これらの効果によって、業務の効率は大幅に向上します。
このように、紙図面の電子化は、さまざまな課題の解決、そして業務効率の向上のためにはもはや必要不可欠な手段となっています。
電子化の利点
紙図面を電子化することで得られるメリットは多岐にわたります。代表的な例として挙げられるのは、以下の5つです。
情報共有・業務効率化
図面や書類の電子化で得られる利点のうち、最も代表的な例として挙げられるのが、情報の共有化と業務効率の向上です。電子化された図面は、インターネットを介して瞬時に共有でき、情報へのアクセスが非常に容易となります。これにより、必要な情報にすぐにアクセスできるほか、担当者間のコミュニケーションもスムーズになるため、業務の効率が大幅に向上します。
省スペース化・クリーンオフィス
図面を電子化してクラウドやインターネット上で保管することで、物理的なスペースを節約できます。当社に寄せられるご相談の中でも、電子化の目的として多く挙げられており、図面の電子化では非常に重視されることの多いポイントです。図面の電子化を行って、原本を移管または破棄することで、大量の紙図面の保管スペースが不要になり、オフィス環境をクリーンに保つことができます。保管スペースの節約は、オフィス賃料の節約につながるほか、新しい会議室や作業スペースを設置する等、オフィススペースの最適化にも役立ちます。
検索性の向上
電子化された図面はサーバーやクラウド上で検索・閲覧することが可能であるため、検索性・可読性が向上します。これにより、遠くのキャビネットや、無造作に積まれた大量の保管箱まで目的の図面を探しに行ったり、不明瞭なラベルを見ながら保存箱やファイルをひとつひとつ探したりする必要がなくなり、業務が大幅に効率化されます。また、図面を電子化する際には、保管階層やファイル名の工夫、インデックス情報の付与、ならびにインデックス情報に紐づく管理台帳の作成などをあわせて行うことで、より一層の検索性向上を図ることが可能です。
劣化防止・可読性向上
電子化されたデータは、紙媒体と異なり物理的な劣化がほとんどなく、長期間にわたっての保存が可能です。電子化を行うことで、図面の劣化が進み情報が読み取れなくなるリスクや、図面が破損するリスクなどを低減することができます。また、閲覧のために図面を取り出したり、遠隔地まで輸送したりする必要がなくなるため、図面を常に適切な環境下で保存することができるようになります。これにより、既に劣化が進んでいる図面についても、それ以上の劣化や破損を防ぐことが可能となります。加えて、ほとんど劣化をしない電子化データは、常に高い可読性を保つことができるという利点もあります。
BCP対策
電子化されたデータをクラウドやサーバーなどに保存しておくことで、地域的な災害などでオフィスが被害を受けても情報を復旧できる可能性が高まります。そのため、図面の電子化はBCP(事業継続計画)対策としても有効です。電子化を行ったデータの複製データを別拠点のサーバーに保存し、分散管理を行うことで、情報の破損リスクを低減し、情報資産を守ることにつながります。また、クラウドやサーバーなどで保管されたデータは、仮にインターネットがオフラインになった場合でも復旧が可能である場合が多く、物理的な損傷等の被害も受けにくいため、業務の継続性を確保することができます。
電子化に際する注意点
以上のように、さまざまなメリットのある図面の電子化ですが、考慮すべき注意点も何点か存在します。
図面の電子化を行う際には、以下の4つのポイントを押さえておきましょう。
高解像度スキャニングの必要性
紙図面の細部まで鮮明に電子化するためには、高解像度でのスキャニングが必要不可欠です。当社では、設計図面などの図面を電子化する場合、400dpi以上でのスキャニングを推奨しています。これは、一般的な書類と同様の200~300dpiでスキャニングを行った場合、図面に記載されている線や文字が不鮮明となり、必要な情報が読み取れなくなってしまうことがあるためです。図面は細部まで描きこまれていたり、紙のサイズに対して文字が小さかったりする場合も多いため、画像の鮮明さの確保が非常に重要となります。高解像度でスキャニングすることで、手書きのメモや細かな線、注釈などの情報も取りこぼすことなく保存することができます。
読みやすさの確保
電子化後のデータの読みやすさは、後の作業効率に大きく影響します。読みやすさを確保するためには、解像度の選択を適切に行い、細かい文字や線まで明確に見えるように調節することが必須です。
さらに、図面をモノクロで撮影して電子データ化する場合、モニター画面に出力した際に詳細が読みづらくなることがあります。このような場合には、モノクロやグレースケールではなくフルカラーでスキャニングを行うことで、電子化後も読みやすさを保つことができます。特に、劣化が激しい図面や、写真や図の多い図面、青焼き図面などの特殊な製法の図面、3色以上を使用して描画されている図面などは、フルカラーでのスキャニングがおすすめです。
大型図面や特殊な形態の資料の取り扱い
大型図面や特殊な形態の資料を電子化する場合には、専用の機器や技術が必要となることがあります。通常、書類の電子化に際して使用される自動送り(ADF)スキャナーは、1枚ずつにばらすことのできるA3サイズまでの書類しかスキャニングすることができません。そのため、例えばA2以上の大型図面や、青焼き図面などの電子化には、大判の図面用スキャナーが必要です。ほかにも、観音製本の図面や、冊子状にまとめられており解体ができない図面、劣化が激しい図面などを電子化するためには、手置きスキャナー(フラットベッドスキャナー)やブックスキャナーが必要となります。
電子化を行う際には、電子化したい図面の形態と、どのような機器が必要となるのかを事前に確認しましょう。
ファイルサイズの管理
フルカラーのスキャニングや、高解像度でのスキャニングによって生成される電子ファイルは、どうしてもファイルサイズが大きくなりがちです。サイズの大きいファイルは、デジタルストレージの容量を消費するほか、メール等のツールを活用した共有がしづらくなる恐れがあります。対策としては、大容量のクラウドストレージを活用して管理するのがおすすめです。クラウドストレージは、いつでも、どこからでもアクセス可能で、添付ファイルのサイズ制限を気にする必要もないため、情報の共有を容易に行うことができます。
また、作成した電子ファイルは、定期的にバックアップを行うことで、データの消失リスクを軽減することができます。
ファイルの検索性と管理
管理しやすく、検索性の高いファイルを作成することも重要です。電子化データを作成しても、ファイル名、フォルダ構成、タグ情報などのメタデータが適切に付与されていない場合には、管理がしづらい上に情報の検索性が向上せず、電子化のメリットを存分に享受することができなくなってしまいます。
電子化データの検索性を向上させ、容易に管理できるようにするには、ファイル名やフォルダ構成の工夫に加え、適切な文書管理ツールの導入や、Excelでの管理台帳の作成なども効果的です。特に、管理台帳の作成時にはファイルパスなどを記録しておくと、より効率的な検索と管理が可能となります。
代行会社・外部サービスの活用方法
図面は、電子化にあたって専用の機器や技術が必要となることから、自社内での対応が難しいとされるケースも数多くあります。そのような場合には、代行会社への委託など、外部サービスの活用が効果的です。代行会社や外部サービスを効果的に活用するための方法を、以下にご紹介します。
代行会社を選ぶポイント
代行会社を選定する際には、必ず確認すべき重要なポイントが何点か存在します。代行会社の選定時には、以下のような点に注目してみましょう。
実績と評判
代行会社の過去の実績や、顧客の評価を確認します。委託したい内容と類似した成功事例が豊富にあり、信頼性が高い会社を選ぶとよいでしょう。コーポレートサイトやサービス紹介のほか、お客様の声や、導入事例などを確認することも有効です。
サービスの範囲
書類や図面をスキャニングするサービスだけでなく、データ入力のサービスや管理台帳の作成、インデックス(属性)入力、電子化後の資料の移管・廃棄などといった、追加サービスも提供している代行会社を選ぶと便利です。電子化はA社、電子化後のデータ入力はB社、その後の廃棄はC社……といったように、複数の代行会社に作業をそれぞれ委託する場合、情報連携や資料の輸送等のステップでトラブルが発生する可能性が高まります。その点、複数のサービスを提供している代行会社であれば、すべての工程が1社で完結するため、このようなリスクを回避することができ、業務全体のスムーズな進行が期待できます。
使用機器と技術
委託を検討している代行会社が、どのような設備を持っているかも確認しましょう。電子化したい図面の種類にもよりますが、できるだけ最新の高解像度スキャナーや、特殊な形態の図面に対応できる専用のスキャナーを使用している会社を選ぶことをおすすめします。図面の電子化は一般的なオフィス文書のそれと異なり、専用の機器が必要となる場合も多いです。代行会社の使用している機器によっては、希望する図面の電子化に対応してもらえない可能性も出てきてしまいます。
また、スキャニングを担当するスタッフの技術も重要となります。文書情報管理士など、専門の資格を持ったスタッフが在籍している会社であれば、安心して資料を預けることができるでしょう。
コストと納期
希望するコストと納期で電子化を実現させるためには、一社だけではなく、複数の代行会社から見積もりを取得し、比較検討をする必要があります。この際、安さだけでなく、サービスの質や納期、品質の信頼性も考慮して選ぶことが重要です。一見してコストパフォーマンスや納期に優れているように見えても、品質に欠けていると修正作業が必要となり、コストも時間も余分に必要となってしまいます。最悪の場合、再度電子化をやり直すことになる可能性も否めません。代行会社の選定時には、品質、コスト、納期の3点をバランスよく比較し、検討することが重要となります。
代行会社に電子化を委託するメリット
図面の電子化を行うにあたって、代行会社を活用する最も大きなメリットは、なんといっても高品質なスキャニングが可能となることです。スキャニングを専門とする代行会社では、高解像度の撮影ができる専用のスキャナーを保有しているため、鮮明な画像データを作成することが可能です。大型図面や特殊な形態の図面にも対応できる専用機器を保有している場合も多く、貴重な資料を傷つけたり、裁断したりすることなく、電子化を行うことができます。加えて、代行会社はファイル名やフォルダ名等のインデックス情報の付与や、フォルダ構成についても熟知しており、検索性の高いデータを作成する技術を持っています。図面は一枚の資料に含まれる情報量が多く、かつ使用頻度の高いものも多いため、高品質で探しやすいデータを作成したい場合は代行会社に委託するのがおすすめです。
さらに、代行会社に電子化を依頼することは、時間とコストの節約にもつながります。自社内でスキャニングからインデックス(属性)の付与、フォルダ構成までの一連の作業を行う場合、相応の時間とそれに付随する人的コストが必要です。しかし、代行会社では、電子化のプロであるスタッフが専用機器を用いて複数名で作業にあたるため、効率的に作業が進められ、短期間で電子化を完了することができます。これにより、社内のリソースを電子化以外の業務に集中させることができ、全体の業務効率向上にも役立ちます。
外部サービスの活用手順
代行会社への委託等、外部サービスを利用する際には、以下の手順を参考にして進めるとスムーズです。
1. 事前準備
電子化する図面の選定と整理を行います。
まず、どの図面を電子化するか選び、それらを整理します。中でも頻繁に利用する図面、劣化が激しい図面、長期間保管すべき重要な図面から優先的に電子化対象としましょう。図面を事前に整理・選定しておくことで、電子化の対象となる資料数を正確に把握することができ、予算や期間が想定を超えてしまうリスクを低減することができます。大量の図面すべてを一度に電子化しようとした結果、計画段階で頓挫してしまうケースは珍しくありません。
また、電子化の目的についても併せて確認し、納期の速さ、画像の鮮明さ、予算など、特に重視したい要件は何かを明確化しておきましょう。
次に、ファイル形式(PDF、JPEGなど、最終的にどのようなデータ形式に加工するか)、フォルダ構成、および希望する納期など、具体的な依頼内容を細かく設定します。これにより、代行会社とのコミュニケーションがスムーズになり、正確な見積もりを得ることが可能となります。
2. 代行会社との打ち合わせ・見積もり取得
次に、専門の代行会社と打ち合わせを行い、サービス内容の確認と見積もりの取得を行います。
代行会社へ見積もり依頼を行うには、希望する仕様を事前に確認しておく必要があります。
見積もりを取得するために必要となる仕様は、主に図面のサイズ、数量(可能であればサイズ別の数量)、形態や状態、ファイル形式、フォルダ構成、納期などです。これらの確認が完了したら、各会社に見積もりを依頼し、電子化業務を委託する代行会社を決定します。
3. 電子化の実施
電子化業務の委託先が決定したら、図面を代行会社まで引き渡し、電子化業務を依頼します。図面の引き渡しは、道中で汚損や紛失、情報の漏洩等が起こらないよう、適切な方法で行いましょう。
実際に作業が開始されたら、定期的に進捗状況を確認します。代行会社と都度コミュニケーションを取り、業務の状況を把握することで、納期遅延などの問題を早期に発見することができます。
4. データの受け取りと検収
最後に、スキャニングされたデータを受け取り、検収を行います。
納品されたデータが、希望どおりの仕様・品質となっているか確認します。解像度や色の再現性のほか、ファイル名やフォルダ構成、その他のインデックス情報等が正しく設定されているかも確認しましょう。 品質に問題がある場合は、速やかに代行会社に連絡し修正を依頼します。
納品されたデータに問題がなければ電子化を完了とし、実際の使用環境にデータを導入します。
以上のステップを踏むことで、代行会社等の提供する外部サービスを活用しながら、効率的に図面の電子化を進めることができます。
まとめ
図面の電子化は多くの利点をもたらす重要なプロセスであり、現代の業務運営には欠かせないものです。情報の共有や業務効率の向上、スペースの削減、検索性の向上など、電子化のメリットは計り知れません。高品質なスキャニングと検索性の高いデータの作成には、専用機器と専門知識を持つ代行会社などの外部サービスの活用が有効です。
紙図面の課題を解消し、業務の効率を向上させるために、今こそ紙図面の電子化を検討してみてはいかがでしょうか。