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ペーパーレス化の効果はどう算出する?数値で見る効果とメリット

現在、多くの企業が業務効率化や経費削減、さらには環境への配慮を背景に、ペーパーレス化を進めています。しかし、こうした取り組みが経営にどれほどの価値をもたらすかを具体的に示すためには、効果を数値化し、費用対効果を明確にすることが必要です。

ペーパーレス化へのアプローチは、主に「はじめから電子フォーマットで書類を作成する」方法と「既存の書類をスキャンして電子化する」方法の2つに分けられます。どちらも効果的な施策ですが、本記事では、「既存の書類をスキャンして電子化する」方法に焦点を当て、その効果の算出方法について解説します。



目次[非表示]

  1. 1.ペーパーレス化と代表的な効果
    1. 1.1.効果1:業務効率の向上
    2. 1.2.効果2:コスト削減効果
    3. 1.3.効果3:リスクの軽減
    4. 1.4.効果4:情報活用の強化
  2. 2.ペーパーレス化による効果算出の具体的方法
    1. 2.1.業務効率改善の効果算出
    2. 2.2.承認プロセス改善の効果算出
    3. 2.3.保管スペース節約の費用対効果
    4. 2.4.書類配付コスト削減の効果算出
    5. 2.5.情報の有効活用化の効果算出
  3. 3.電子化にかかる費用と費用対効果
    1. 3.1.電子化にかかる費用の目安と算出方法
    2. 3.2.電子化の費用対効果の算出方法
  4. 4.プライスレスな価値と付加的な効果
    1. 4.1.①業務の効率化
    2. 4.2.②テレワーク推進
    3. 4.3.③CO2排出量の抑制
    4. 4.4.④リスク回避
  5. 5.まとめ



ペーパーレス化と代表的な効果

紙の書類を電子化し、ペーパーレス化を進めることで得られる効果は多岐に渡ります。代表的な例としては、業務の効率化コスト削減リスク軽減情報活用の強化などが挙げられます。


効果1:業務効率の向上

ペーパーレス化のもたらす効果としてまず挙げられるのが、業務の効率化です。電子化によって情報へのアクセス性が格段に向上し、従来、書類の検索や取り寄せなどにかかっていた時間と手間が大幅に削減されます。
時間や場所にとらわれず書類が閲覧でき、また一度に複数人が同じフォイルへアクセスすることも可能であるため、企業内の情報連携や資料の配付、書類の回覧などもスムーズになります。 


効果2:コスト削減効果

紙を削減し、電子データを活用することで、書類の印刷輸送保管などのコストを大幅に削減することが可能です。まず、書類の保管スペースが不要になることで、オフィススペースを最適化できるため、賃料や設備にかかるコストが削減されます。
ほかにも、プリンターのインクやトナー等消耗品のコスト削減、取り寄せや送付にかかる輸送コストの削減など、さまざまな運用コストを低減することができます。


効果3:リスクの軽減

電子化によるリスクの軽減効果も重要なポイントです。紙の書類には持ち出しによる紛失や情報漏えい、経年による劣化、自然災害による破損などといったリスクが伴いますが、電子化することでデータのバックアップ保存やアクセス制限の付与が可能になり、さまざまなリスクが軽減されます。
それにより、企業の信頼性向上が期待できるほか、紛失や漏洩に伴う直接損害金額も抑制されます。


効果4:情報活用の強化

電子化によって、今まで見つけられず埋もれていた情報や活用機会が損失されていた情報が可視化され、情報資産として活用できるようになります。電子化によってデータが一元管理され、検索性が向上することで、情報がより迅速かつ容易に利用可能になり、情報の収集やアイデアの創出などに役立ちます。
これによって、組織全体の知識の集約と活用が促進され、さまざまな意思決定の場面で効果的にはたらきます。

このように、ペーパーレス化は業務効率コスト削減リスク回避情報活用などさまざまな面で効果をもたらし、企業の成長と運用に大きく寄与します。そして、これらの費用対効果は、次のような方法を用いて、具体的な数値を算出することができます。



ペーパーレス化による効果算出の具体的方法

企業がペーパーレス化を進める際、関心が高いのはやはり「どの業務項目で」「どれほどのコスト削減や効率改善が期待できるか」などといった具体的な効果でしょう。ここでは、紙文書のデジタル化がもたらすさまざまな効果と、電子化によって削減できるコストの算出方法を項目ごとにご紹介します。


業務効率改善の効果算出

ペーパーレス化により、書類の検索アクセス迅速化することで、業務の負担が軽減されます。電子化を行うことで、フォルダ名やファイル名で情報をすぐに検索できるようになるため、これまで検索に費やしていた時間コストを削減することができます。さらに、書類を倉庫などから取り寄せる手間が不要になり、配送や郵送に関連するコストも抑えられます。これにより、日常業務の効率が大幅に向上します
これらの電子化によって削減できるコストは、以下の方法で算出できます。


<書類の管理・ファイリングにかかるコストの算出方法>

管理・ファイリングにかかるコスト = 手作業にかかる時間 × 人件費


<書類の検索にかかるコストの算出方法>

書類の検索にかかるコスト = 書類の検索時間 × 人件費


<外部倉庫に保管されている書類の取り寄せにかかるコストの算出方法>

書類の取り寄せコスト(倉庫) = ( 入出庫 + 配送料 ) × 箱数


<郵送・FAXによる書類の引き取り送付などにかかるコストの算出方法>

書類の取り寄せコスト(郵送・FAXの場合) = 検索時間 × 件数 × 人件費 + 郵送費またはFAX費 × 件数


書類の検索にかかる時間は、1日1人平均20分~30分と言われています。例えば、ペーパーレス化によってこれらの時間が短縮され、時給2,000円(33円/分)の職員20人の検索時間を1日20分削減できるとしたら、「20分 × 20人 × 33円(/分) × 240日 = 年間約3,170,000円」の時間コスト削減が実現します。
加えて、「探し出した書類を再度ファイリングし、元あった場所に正しく戻す」手間、あるいは「検索の結果、外部の倉庫や遠隔地の事務所に保管されていることが判明した書類を取り寄せる」のにかかるコストなど、付随する手間コストをも削減でき、非常に大きな費用対効果を得ることができます。


承認プロセス改善の効果算出

電子化の進展により、承認プロセスでの書類の移動迅速化され、業務の負担が軽減されます。従来の紙文書では、書類の印刷、承認印の授受、指定された提出場所への持参など、承認に至る各プロセスで書類を持ち運ぶ必要がありました。しかし、電子化を推進し、情報を共有することで、これらの移動にかかる時間とコストを削減することが可能です。これにより、日常業務の効率は大幅に向上します。
これらの電子化によって削減できるコストは、以下の方法で算出できます。


<書類の移動などにかかるコストの算出方法>

書類の移動コスト = 書類の移動時間(書類を持って回る時間)× 人件費


例えば、人件費が時給2,000円(33円/分)、職員数が100名、承認件数が年間60件程度の企業で、1回の承認につき30分の移動時間がかかる場合、書類を持って回るだけで「30分 × 100人 × 33円(/分) × 60件 = 年間約6,000,000円」ものコストがかかっていることになります。電子化により、自席のパソコンから直接承認を受けることができるようになれば、これらのコストを削減しながら、業務効率を向上させることが可能です。
また、書類の印刷にかかるコストや手間、書類提出から承認にかかるまでのタイムラグなども、あわせて削減できます。


保管スペース節約の費用対効果

紙文書を電子化することで、保管スペースが不要となり、オフィスや倉庫の賃料削減できます。加えて、空いたスペースを会議室や集中ブースに活用するなど、スペースの有効利用も推進されます。
これらの電子化によって削減できるコストは、以下の方法で算出できます。


<書類の保管にかかるコストの算出方法:執務室内での保管の場合>

書類の保管コスト(執務室保管の場合) = オフィスの賃料 × 面積 × 期間


<書類の保管にかかるコストの算出方法:外部倉庫での保管の場合>

書類の保管コスト(倉庫保管の場合) = 倉庫の賃料 × 箱数 × 期間


例えば、執務室内で奥行き40cmのキャビネットに書類を保管している場合、書類の出し入れのために手前1m程度の空間も占有することを加味すると、キャビネット1台あたり0.38坪を占有していることになります。この場合、仮にオフィス賃料の坪単価が18,000円/月とすると、キャビネット1台につき「0.38坪 × 18,000円 × 12カ月 = 年間約82,000円」を電子化によって削減できることになります。
同様に、倉庫内で難百箱もの書類を大量に、かつ長期間にわたって保管している場合も、相応の賃料削減が見込まれます。


書類配付コスト削減の効果算出

電子化により、資料を紙の書類ではなく電子で配付することで、プリントコピーファックスのコストを削減できます。特に、会議のたびに人数分の資料を印刷していたり、各部署や個人が保管用に大量にコピーを取っていたりする場合、大幅な経費削減が見込めます。
これらの電子化によって削減できるコストは、以下の方法で算出できます。


<書類の配付にかかるコストの算出方法>

書類の配付コスト(印刷・コピー・紙代) = 印刷費・コピー費・FAX費 × 件数 + 紙代 × 枚数


情報の有効活用化の効果算出

電子化によって、今まで見つけられず埋もれていた情報や活用されていなかった情報が可視化され、情報資産として活用できるようになります。電子化により、企業内のあらゆるデータが整理され、検索性が向上することで、必要な情報を迅速に取り出せるようになり、情報収集や活用、アイデアの創出などに役立ちます。電子データの活用は、戦略的な意思決定をサポートし、組織全体の知識の集約と活用を促進します。
これらの電子化によって削減できるコストは、以下の方法で算出できます。


<情報が活用されない場合にかかるコストの算出方法>

情報の活用による価値 =埋もれていた情報の機会損失金額の抑制


例えば、過去のデータ分析によりビジネス改善や新たなビジネスチャンスの発見につながった場合、電子化は組織にとって非常に大きな価値をもたらします。情報の有効活用は、企業の競争力を高め、持続可能な成長につながります。



電子化にかかる費用と費用対効果

続いて、代行会社に電子化を依頼する際に必要となる費用と、その結果得られる費用対効果の算出方法について解説します。


電子化にかかる費用の目安算出方法

代行会社に電子化を依頼する際の初期費用は、書類の枚数作業内容によって決まります。そのため、まずは電子化の対象となる書類の量を確認することが重要です。
紙の厚さや大きさなどでも変動しますが、普通紙の場合、「1センチの厚さで約100枚」、「一般的な文書保存箱ひと箱で約3000枚」、「幅90cmのキャビネット1段で約5,000枚~6,000枚」程度がおおよその目安となります。紙の厚さ箱数棚数などを数えて、概算の書類枚数を算出します。

次に、代行会社への見積もり依頼、または各代行会社の料金プランと算出した書類枚数を掛け合わせて、おおよその費用感を算出します。その際に注意が必要なのが、ページの数え方です。一般的に、電子化の料金は1ページ単位で計算され、両面印刷は2ページ扱いとなりますが、代行会社によっても異なっています。
また、場合によっては仕様の確認などをせず「一枚〇円」とだけ回答されるケースもあります。その場合、希望する仕様通りの電子化が可能かどうかもしっかりと確認しておきましょう。

また、電子化にかかる費用は付箋やクリップの有無、製本されている資料の解体可否、ファイル名やフォルダ構成の指定の有無、OCR実施の有無、などのオプション作業によっても変動するため、仕様をなるべく細かく決定しておくことも重要です。見積もりの結果、必要コストが高いと感じた場合は、優先度の低い項目を省くことでコストを抑えられます。
費用をより最適化するため、代行会社には書類の状態や必要な工程を詳細に伝えるとよいでしょう。

一例として、弊社では以下のような料金プランをご用意しています。また、見積もりを依頼する際のポイントについては、以下のブログ記事にて詳しく解説しておりますので、ご興味のある方はぜひ併せてご覧ください。

►料金プラン:ジェイ・アイ・エム料金プラン 標準価格パッケージ

►関連記事 :電子化コストの費用対効果を高めるには?電子化のコストを抑える方法とともに解説



電子化の費用対効果の算出方法

電子化の費用対効果は、電子化の実施にかかるコストから削減できるコストを差し引くことで算出できます。


<電子化の費用対効果の算出方法>

電子化の費用対効果 = 削減できるコスト − 電子化にかかる費用 + その他のプライスレスな効果


まず、前段にて算出した「電子化を通じて削減できるコスト」をすべて合算します。その合計金額から、見積もりや料金プランから算出した「電子化にかかる費用」を差し引いた金額が、電子化によって得られる費用対効果となります。

また、この際にポイントとなるのが、業務の効率化やテレワーク推進、書類の紛失および情報漏えいリスクの回避など、「電子化によって得られるプライスレスな価値・付加的な効果」です。電子化によって得られる効果は、具体的に効果を数値化して算出できるものだけにとどまりません。プラスアルファで発生するプライスレスな価値や付加的な効果も考慮することで、より具体的な費用対効果を導き出すことが可能です。
例えば、電子化によって削減できるコストが1,000,000円であり、導入費用が600,000円である場合、見込まれる費用対効果は400,000円となります。加えて、「電子化がテレワークの推進につながる」、「書類の紛失や損失のリスクを回避できる」といったその他のプライスレスな効果が得られれば、その費用対効果はさらに高まるといえるでしょう。



プライスレスな価値と付加的な効果

ペーパーレス化を行うことで、さまざまなコストの削減が実現します。しかしペーパーレス化の効果は、数値で測れる具体的なコスト削減や効率改善だけにとどまりません。企業がペーパーレス化を推進することで得られる、以下のような「プライスレスな価値」もまた、大きな意義を持ちます。


①業務の効率化

電子化により手間の削減や情報の共有化、検索性の向上などが進むことで、業務が効率化され、生産性の向上につながります。顧客や他部署からの問合せなどに対しても迅速な情報提供が可能になるため、ミスの削減や顧客満足度の向上、企業としての信頼性の向上なども期待できます。


テレワーク推進

ペーパーレス化は、テレワークの推進にも大きく寄与します。書類を電子化することで、遠隔からでも情報へアクセスできる環境が整い、テレワークの導入がよりスムーズになります。これにより、柔軟な働き方ができるようになれば、従業員の働きやすさ満足度向上にもつながります。
さらに、従来は紙文書の保管に使用されていたスペースを会議室や集中ブース、休憩スペースなどに活用することもでき、オフィススペースの最適化にもつながります。


CO2排出量の抑制

ペーパーレス化により紙の消費が減少することで、CO2排出の抑制や森林資源の保護といった環境負荷の軽減も期待できます。企業がこのようにSDGs(持続可能な開発目標)への貢献を示せることで、環境意識の高い企業としての評価が高まり、顧客やパートナーからの社会的信頼が向上します。


リスク回避

電子化した書類には、ファイルへのパスワード付与や暗号化、フォルダへのアクセス制限などを設定することができ、セキュリティの面でも優れています。これにより、書類の紛失や情報漏洩などのリスクが軽減され、想定される直接損害金額も抑制されます。
許可のない書類の持ち出しや重要書類の紛失などに対するリスクが大幅に低減することで、組織としての安全性や、社会的な信頼性が向上します。

以上のように、ペーパーレス化を行うことによって、コスト削減のような即自的で目に見える効果だけでなく、プライスレス付加的な効果も多く受けることができます。これらの効果を存分に活用することで、顧客や従業員の満足度向上にも役立てることが可能です。



まとめ

ペーパーレス化の推進にあたっては、その具体的な効果を数値化して算出することが非常に重要です。本記事では、検索時間保管スペース削減情報活用の強化など、電子化によって得られる効果を具体的に算出する方法をご紹介しました。これにより算出した効果の金額から、電子化にかかる費用を差し引くことで、具体的な費用対効果を算出することが可能です。
さらに、電子化を進める際には、数値化が難しい付加的な効果も数多く存在します。こうしたプライスレスな効果も、企業の経営に大きな価値をもたらします。

費用対効果を具体的に算出し、自信を持ってペーパーレス化の導入に取り組みましょう。




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