ファイルサーバー整理の基本|迷わず進める方法と“探せる仕組み”のつくり方

ファイルが増える一方で、削除や整理は後回しになりがちです。気づけばフォルダ構成は複雑になり、「サーバーの空き容量が足りない」、「どこに何があるか分からない」……などのお悩みを抱えていませんか?
本記事では、整理に取り組む際の基本ポイント、ツール導入時に知っておきたい点、そして“整理しなくても探せる仕組み”という選択肢まで、わかりやすくご紹介します。
なぜファイルサーバーは膨れ上がるのか
ファイルサーバーの容量ひっ迫は、どのような企業でも起こりうる課題です。
原因はとてもシンプルで、日々の業務の中で新しいファイルが次々と保存される一方、古いデータの削除や整理はどうしても後回しになりやすいためです。その結果、版が古いファイルや使用頻度の低いファイル、作成者・目的が不明なフォルダが積み重なり、サーバーの容量や管理効率を圧迫していきます。
さらに近年では、クラウドストレージの利用拡大により、情報が複数の保存場所に分散する傾向も一層強まっています。ここで発生するのが、「どこに何があるのかわからない」という課題です。様々なストレージを併用することで、アクセス性や利便性は高まりますが、その反面管理や運用の負担は増大します。「どのストレージに保存されているのか」「どのファイルが最新なのか」「どのデータを共有すべきか」が不明確になるケースも少なくありません。
このような状況で「ファイルサーバーを整理しよう」と決定しても、効率的な整理を進めるのは難しいでしょう。部門やチーム、プロジェクトごとに保存ルールが異なり、ファイル名の命名規則も統一されていない。誰もが自分のやり方で管理しているため、全体像を把握することすらも容易ではありません。
どこから手をつけるべきか、削除や保管の判断をどうすればよいか、などのルールが曖昧なままでは、効率的な整理は進められないのです。
手作業でできる整理・削減の進め方
では、実際にファイルサーバーの整理に着手するには、どのように進めればよいのでしょうか。
ここでは、担当者一人からでも取り組める「手作業による整理・削減の進め方」を、具体的なステップに沿ってご紹介します。現場で無理なく実践できる範囲を明確にし、計画的に進めることがポイントです。
ステップ1:フォルダ構成を再設計する
まずは、現在のフォルダ構成の棚卸から着手しましょう。フォルダの構成を見直し、保存されているデータの「見える化」を進めることが、ファイルサーバー整理の第一歩です。
このとき、全体を一度に整理しようとせず、参照頻度が高い領域や混乱が起きているフォルダなど「優先順位の高い場所からスモールスタートで進める」ことが、負荷を抑えつつ確実に進めるコツです。
こうして棚卸しの焦点が定まったら、次は「何をどう見直すか」に取り組みます。個々のデータではなくフォルダ構成から根本的に見直すことで、どのデータがどこに保存されているかを把握でき、不要なデータや重複ファイルの早期発見にもつながります。
データの棚卸が完了したら、誰が見ても理解できるわかりやすい形にフォルダ階層を再構成します。階層の深さは「フォルダへの格納」と「検索」のしやすさに留意しながら設定し、多くても8階層以内にとどめるのが適切です。
例として、「部門別>業務別>年度別>種類別」などといった4階層程度で、シンプルに作成するのがおすすめです。
また、個人フォルダは構造を複雑にする原因となるため、この段階で整理し、必要に応じて共有フォルダへ統合しておくとよいでしょう。
ステップ2:不要ファイルを洗い出す
続いて、不要ファイルの候補を抽出します。この作業は、目視確認や担当者の感覚などではなく、客観的なデータに基づいて行うことが重要です。あらかじめ「最終更新日」や「最終アクセス日」、「ファイルサイズ」などのメタデータに基づいた判断基準を設定し、その基準に沿って洗い出しを行います。
なお、環境によっては最終アクセス日が記録されない(または更新されない)設定になっている場合があるため、利用する際は事前にOSの設定や運用状況を確認しておくと安心です。感覚的な判断を排除することで、誰が実施しても同じ基準で整理できる環境が整います。
判断基準の例としては、次のような条件が挙げられます。
- 3年以上更新されていないファイル
- 1年以上アクセスがないファイル
- 容量が極端に大きく、使用頻度も低いファイル
- 最終版の作成前にやり取りしていた下書きや旧版のファイル
- 同一資料の複数版が存在するファイル
ここで抽出したファイルは、直ちに削除するのではなく「削除予定」フォルダにまとめて一時的に保管しておくと安全です。ただし、一時保管を行う場合、無期限に保管するのではなく1〜2か月程度で保留期間を区切り、業務への影響がないことの確認が取れ次第確実に削除を行います。
また、上記の判断基準に当てはまるが保管義務がある、などの場合、正式フォルダには常に最新版のみを残し、旧版は「保管」フォルダへ移動する等のルールを徹底したうえで保管を行いましょう。
このように、データに基づいた選別を行うことで、感覚に左右されない一貫した整理が実現します。
ステップ3:重複ファイル・個人保管ファイルをチェック
不要ファイルの洗い出しが完了したら、同じファイルが複数の場所にないか、個人フォルダにのみ残っている重要ファイルがないかをもう一度確認します。特に「担当者が自分の個人フォルダで作成した資料をメールで送り、受け取った別の担当者がそのまま共有フォルダへ保存し直している」、「各自がそれぞれ自身の保管しているファイルを正と考えている」などといったケースは、ステップ1、2で見落とされがちな典型例です。
関係者間でよくコミュニケーションをとり、確認リストを作成・回覧するなど工夫しながら、複数の目線で該当ファイルの有無を確認しましょう。
重複や個人保管のファイルが見つかったら、正となるファイルと保管場所を決定し、一元化して保存します。残りの重複ファイルは確実に削除し、個人フォルダにのみ保管されている重要ファイルも正しい保管場所に保管し直しておきましょう。
ステップ4:整理後の運用ルールを定める
最後に、整理後の運用ルールを定めます。ファイルサーバー整理の最大のポイントは、「一度きりの作業」で終わるのではなく、「継続的な取り組み」として設計することです。ファイル名の付与、フォルダの構成、各データの保管場所、版の取り扱いなど、運用に必要なルールを簡潔に定め、関係者への周知を徹底しましょう。
何からルールを定めてよいかわからない場合、最低限、以下のルールは定めておくのがおすすめです。
- ファイル名の付け方
例:年月日_案件番号_タイトル_版数として保存する - 保存場所の決め方
例:業務別のフォルダに保存し、個人フォルダは一時置き場としてのみ使用する - 版の取り扱い
例:作成履歴と最終版を分け、最終版のみ正フォルダ、作成履歴は「済」フォルダに保管する 等 - 保管期間の目安
例:最終更新日または最終アクセス日から3年が経過したファイルは削除する 等
運用ルールはただ策定して終わりではなく、短い説明を添えて周知し、数か月ごとの棚卸しや年一回のフォルダ見直しなど、定期的な整理と周知を継続することで定着をめざします。人事異動等、関係者に変動があれば、その都度正しい運用ルールの周知徹底を行いましょう。
やっぱり手作業は限界?管理ツールという選択肢
ここまで、手作業による整理の進め方をご紹介してきました。しかし、実際に整理を始めてみると「確認だけで1日終わってしまう」、「担当者によって判断にばらつきがある」など、予想以上に担当者の負担が大きくなってしまうことも少なくありません。整理したいファイルの数が多ければ多いほど、手作業での整理はどうしても限界が見えてきます。
そこで役立つのが、ファイルサーバー管理・分析ツール(以下『管理ツール』)の活用です。このツールは人が苦手とする“広範囲のデータを一度に分析する作業”を得意としており、整理全体の効率化に大きく貢献します。
例えば以下のように管理ツールを活用すれば、すべて手作業で行うよりも効率的に作業を行うことができます。
- フォルダごとの使用容量を可視化し、どこにデータが集中しているかをひと目で把握する
- 重複ファイルや類似ファイルを自動で抽出し、整理対象を素早く特定する
- 作成・更新日時、最終アクセス日時が古いファイルやデータを一覧化し、整理候補として提示させる
- アクセス権や共有範囲の状況をレポート化し、セキュリティリスクを“見える化”する
- 週次・月次レポーティングを自動化し、改善状況を継続的に把握する
ただし、管理ツールはあくまで整理を支援するための装置であり、「削減するファイルをすべてツールが判断して整理してくれる」というわけではありません。導入にあたっては、以下の点を留意しておく必要があります。
- ツールが示すのはあくまで「候補」であり、どのファイルを残し、削除するかの最終判断は必ず人が行う必要がある
- 権限・ログ・データの取り扱いなどのセキュリティ条件が社内基準を満たすかの確認が不可欠である
- 全社的に導入する場合、まずは特定部門や特定フォルダなど、小さな範囲で試行を行い効果の検証を行う必要がある
- 以上の導入コストとファイルサーバー整理による経費削減効果を照らし合わせて、費用対効果の評価を行う必要がある
管理ツールは整理の「根拠」を提示してくれるため、作業の効率化には大きく寄与します。一方で、ツールの導入には一定の費用がかかり、社内の調整も必須です。また、ツールが自動で「どのファイルを残すか」まで決めてくれるわけではなく、最終的な判断やルールづくりは人の手に委ねられます。
つまり、管理ツールはあくまで作業を補助する存在であり、ファイルを残すか削除するかという根本的な判断は依然として必要になります。
整理より、“探せる仕組み” をつくるほうが近道かも?分散環境でも使える仕組みづくり
管理ツールを使っても、最終的な「残す・消す」の判断は担当者が行わなければなりません。つまり、ツールは負担を軽くしてくれる存在ではあっても、整理の悩みそのものを解消してくれるわけではありません。
ここで改めて考えたいのが、「そもそも、なぜファイルサーバーを整理したいのか?」という点です。ファイルサーバーの容量がいっぱいだから?保管コストがかかるから?それとも、「必要な情報がすぐ見つからないから」でしょうか。実は、サーバー整理の目的が「情報を見つけやすくしたい=検索性を上げたい」という理由であれば、整理の手間をかけるより、探しやすい環境をつくることに注力する方がはるかに効果的です。
“どこにあるか”を気にしなくてよい仕組みを作る
今やファイルサーバー、クラウドストレージ、社内ポータルなど、情報の保存先が複数に分散するのは一般的になりました。場所が増えれば増えるほどどこに何があるのかを把握するのは難しくなり、ファイルサーバーの整理だけで状況を改善するというのはなかなか容易ではありません。とはいえ、データの総容量やリスク管理を鑑みると、すべてのデータを一箇所に集約して整理するのも現実的とは言い難いでしょう。
そこで役立つのが、エンタープライズサーチのような、「横断的に探せる」仕組みの活用です。これは、保存場所が異なるデータでもまとめて検索できる、つまり「横断検索」の実現が可能になる仕組みです。
ファイルサーバー、クラウド、ポータルなどの分散したデータを一括で検索できるようになれば、ユーザーは「どこに何のデータがあるか」を意識せずとも、必要なキーワードで探すだけで容易に情報へアクセスすることが可能になります。
情報を横断的に探せるようになれば、ファイルサーバーの整理に時間をかけすぎなくとも良くなります。検索性の向上が目的なら、整理よりも「探せる状態」に変えるほうが近道であるといえるでしょう。
整理ではなく「使える状態」をめざす
きれいなフォルダ構造をつくること自体は重要なことですが、それが目的になってしまうと負担が増える一方です。本質的な目的は、必要な情報にすぐアクセスできること。最低限のルール整備は必要ですが、完璧な整理を追求するより、散らばっていてもすぐ探せる環境づくりをするほうが業務効率は向上します。
完璧な整理を続けるのではなく、仕組みで「探せる状態」に変える。これが、これからの情報管理の現実的なアプローチです。
まとめ
ファイルサーバー整理は重要な業務ですが、検索性を上げたいという目的に対しては、整理だけではどうしても手間がかかってしまいます。
そこで、エンタープライズサーチのような分散した情報を横断的に探せる仕組みを取り入れることで、場所にとらわれず必要な情報へアクセスしやすくなり、整理の負担を大きく軽減できます。
フォルダの整理に時間をかけるのではなく、「探せる・使える」状態に変える。この考え方が、情報管理のニュースタンダードです。
どこに保存されていてもすぐに見つかる、そんな迷わない環境づくりをぜひ、実現してください。